材料学で弾性限界という言葉がある。金属を曲げていくと、しばらくはバネのように元に戻るが、ある力以上をかけると戻らなくなる。その点を弾性限界と言い、そのあとは力を加えただけ形を変え続ける塑性変形が始まる。日本と中国の関係はまさに塑性変形の段階に入ってしまったようである。
もう元には戻れなくなった日中関係
姫田小夏さんは「火がついてしまった日本への『積年の恨』 とても関係修復が見込めない中国のけんか腰」の記事で、日本と中国の関係修復はほとんど見込みがなくなったようだと書いている。
その理由はエスカレートするばかりの中国の複合的、重層的な制裁戦術である。日中間に修復不可能なほどの大きな力で制裁を加え始めたと言うのだ。
「中国を『大国』レベルにまで引き上げたのは、外資系企業による中国進出だ」
「その中でも日本企業は経済活動を通して中国に有形、無形の貢献をもたらしてきた。それが手のひらを返したかのように『日本企業よ、出ていけ』と言わんばかりだ」
「『領土問題とはまったく関係のない民間を巻き込んでの復讐は目に余るものがある』と上海の日本企業の駐在員も話す」
官製メディアも中国の国民を煽り続けているようだ。
「外交、軍事面に強い中国の『環球時報』は社説で、政治・経済・外交・軍事・歴史を含めて日本と全面的対決に突入する“心の準備”を国民に向けて次のように訴えた」
「闘争は長期化し、複雑化する。それは中国人にも犠牲をもたらすだろう。その経済損失に耐えられず、かつ途中で意志を緩めてしまうかもしれない。だからこそ真実の団結が必要なのだ──」
こうなってくると、日本の経済界も淡い期待は抱かない方が身のためかもしれない。中国市場からの撤退を真剣に視野に入れた戦略が必要ではないだろうか。
中国の“対日制裁”は米国にも及んでいる。宮家邦彦さんは「サンフランシスコ中華街でも増殖する『反日活動』 若者を操る陰の扇動者」の記事で、米国西海岸でも反日活動が活発化していると言う。
そして、その反日デモは自然発生的なものではなくて、誰かが意図を持って若者を操っているのではないかと見る。