経営不振に陥っているルネサス エレクトロニクス(注:2010年4月にNECエレクトロニクスとルネサス テクノロジが経営統合して誕生)が9月18~26日にかけて、5000人を目標に早期退職希望者を募集した。その結果、初日の18日に目標を上回る五千数百人の応募があったため、初日で応募を締め切ったようだ(10月4日追記:本日の日本経済新聞によると初日応募者は7511人だったとのことである)。
周りの様子を見てから応募しようと思っていた人も多数いたのではないかと思うが、あっという間に早期退職の枠は埋まってしまった。いや、「埋まった」どころではなく、はみ出してしまった。この「はみ出し」が珍奇で恐ろしい問題を生じさせている。
早期退職に際しては、通常の退職金に加えて給与の36カ月分がプレミアとして上乗せされる予定だった。ところが、想定していた枠から「はみ出し」てしまったため、おそらく早期退職金の原資が足りなくなり、何と「36カ月のプレミア分は来年(2013年)の9月に払う」ことになったらしい。
しかし来年の9月、つまり1年後、果たして現ルネサスは、ルネサスとして存続しているのだろうか?
現在ルネサスを巡って、米投資ファンドKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)と産業革新機構を筆頭とした官民連合が買収争いをしている。その結果いかんによっては、来年9月にルネサスという会社はないかもしれないのだ。すなわち、「36カ月のプレミア分」が支払われる保証はどこにもない。なんと恐ろしいことか!
そもそも、ルネサスがこのような経営危機を招いてしまった直接的原因はどこにあったのか?
本当は日立製作所と三菱電機が合弁したこと、すなわちルネサス テクノロジを設立(2003年4月)したこと自体が失敗だったのだが、それについては以前に記事を書いた(「合弁や分社化で弱体化した半導体メーカー、組織をいじるとロクなことはない」)。本稿では2010年4月の新生ルネサス誕生以降に焦点を当てることにする。
目標の設定が間違っていた「100日プロジェクト」
新生ルネサスが誕生した際、赤尾泰社長は「成長市場での事業拡大」と「固定費削減」を目的とした2010~2012年の中期計画「100日プロジェクト」を発表した。
その主な内容として、以下のことが掲げられた。