9月21日 厚生労働省関東信越厚生局は、東京医科大学茨城医療センターの保険医療機関指定取り消しを発表しました。

 取り消し理由は、2008年4月から約1年の間に施設基準の虚偽申請による約8200万円の不正請求が行われた、というものです。

 これにより、外来患者1000人/日を診察し、3300件/年もの救急搬送を受け入れてきた同病院は、12月1日より保険診療ができなくなります。500床以上の地域医療の中核である大学病院が保険指定を取り消されるのは前代未聞です。

 12月までの短期間で他の医療機関へ振り分けて受け入れる体制を作るのは事実上不可能であり、地域の住民の方々に及ぶ影響は甚大です。

 もちろん制度は制度として守り、違反した場合にペナルティは科すべきでしょう。

 それでも、今回、虚偽申請が行われたという診療報酬上の加算制度は、2008年に付け加えられた要件によって当初の理念から離れ、現場に非効率的な運営を強いるものに変化してしまっていた部分があります。そのことだけは皆さんに知っておいてほしいと思うのです。

フルラインで診療を行い、短期間で治癒率40%という目標設定

 今回、茨城医療センターが不正請求を行った加算制度は、「入院時医学管理加算」と「医師事務作業補助体制加算」というものです。

 まず、「入院時医学管理加算(別添3)」から見ていきましょう。

 これは、そもそもは地域の中核病院として急性期医療を行う医療機関について点数を手厚く配分するものでした。

 しかし2008年の改定で、算定要件として、産科、小児科、内科、整形外科および脳神経外科のみならず精神科にも「24時間対応診療をする」ことが加わりました。

 さらには、「退院後に外来通院治療の必要が全くない“治癒率”が40%」という要件も加わりました。

 「治癒率40%」の要件をクリアするのは容易なことではありません。いくつかの専門分野に経営資源を集中させ、医療機器とスタッフを充実させるのであればまだしも、ほぼ全ての診療科の診療を行い、治癒率40%を達成するのは地域の中規模病院にとってはかなり無謀な目標設定です。算定病院が全国にわずか170件あまり(大半の県では算定病院が0~3件しかありません)しかないのも当然でしょう(参考:「入院時医学管理加算届出医療機関における指定状況」)。