世界史を過去300年ほど遡ると、見方によっては戦争の歴史、つまり領土問題の歴史と言えるほど多くの争いが起きてきた。ここでは尖閣問題を、少し距離を置いたところから眺めてみたい。

 日本のメディア報道の中には、世界へ向けて日本の立場を主張すべしとの議論がある。日本の立場を広く説くことで、他国に領有権の正当性を認めさせる意図がある。

日米安保が適用されるとの発言はあるものの・・・

中国各地で反日デモ、中国監視船11隻が接続水域に

中国で沸騰する反日デモ〔AFPBB News

 ただ諸外国の関係者は、すでに日本が尖閣諸島の領有を主張している事実をよく知る。同時に、中国側が「釣魚島に対する主権は弁駁を許さない」(北京週報)と記す通り、同じように領有を主張していることも熟知する。

 米国政府は1996年以降、「尖閣諸島で日中のいずれの立場も支持しない」との立場を崩していない。先日、来日したレオン・パネッタ国防長官も同じ内容の発言を繰り返した。

 ただ、中国との有事が起きた時、日米安全保障条約第5条(米国の対日防衛義務)が適用されて、「条約の義務を遂行する立場は変わってない」とも述べ、交戦した場合は日本側に回ることを示唆している。

 筆者の周囲にいるヨーロッパからの特派員数人に話を聞くと、尖閣問題では中立的な意見を述べる者が多い。ドイツの大手経済紙の記者は、

 「歴史的な背景を探ると、日中両国はほとんど水掛け論を展開しています。ですから、どちらの国が『先占の要件』を満たしているのか、文献を読んだだけでは分かりません。すぐには解決しないでしょう」

 と述べ、問題の長期化は必至だとの意見だ。