今週は家、あるいはファミリーについて考えさせられる内容の記事があった。川井龍介さんの「アメリカで最も成功した日系スーパー」と早稲田大学教授の森川友義さんによる「子供を不良債権化し家を崩壊させた日本の相続税」である。2つの記事の意図は全く異なるが、家やファミリーの絆が企業経営でも国家経営でもいかに大切な要素であるか思い起こさせてくれる。
宇和島屋の成功を支えた家族の絆
「アメリカで最も成功した日系スーパー」は、シアトルに拠点を置く宇和島屋である。宇和島屋は創業当初は日系移民に対するきめ細かいサービスで成功を収め、その後は米国人に顧客を広げていった。
現在は、品揃えの豊富さと高品質を売り物にする高級スーパーへと変身。そしてさらなる高級化路線へと舵を切り、次の成長路線へ乗り始めている。
今回、川井さんの取材に同行して、会長のトミオ・モリグチさんをはじめ、ファミリーの方々にインタビューした。
そこで最も強く感じたのは、宇和島屋の成功はファミリーの絆にあるということだった。
日系の移民で賑わっていた創業当初や日本の高度成長で多くの日本人がやって来た時代には日本を売り物にすれば商売ができた。
しかしその後、日本の存在感が急速にしぼむ中で事業を維持するのは並大抵なことではない。まして拡大させるには確固たる経営力が不可欠だ。
それはかつて日本の勢いに乗って世界中に進出した日本のスーパーや百貨店が苦戦しているのを見ればよく分かる。
そうしたなか、宇和島屋はファミリーの力を結集して強くなっていった。
宇和島屋はトミオさんの両親である故・森口富士松さんと妻の故・貞子さんが愛媛県から米ワシントン州のタコマ市に渡って開いたお店である。