「中華まん」というと、ぼんやりと学生時代の頃がよみがえってくる。寒い冬の夜、ぐだぐだと遊んだあとに友だちと一緒にコンビニに寄り、ほかほかの肉まんと缶コーヒーを買う。両手で抱えた肉まんを、冷めないうちに夜道でそのままパクつく。

 近頃は1個110~120円くらいに値上がりしているが、当時は100円玉ひとつで買えた。ボリュームもそこそこで、暖もとれる。お金のない学生にとって、小腹を満たすにはうってつけの食べものだった。

冬の食べものの定番となった「中華まん」。「肉まん」や「豚まん」とも

 今となってはコンビニで買い食いする機会もめっきり減ったが、それでも中華まんだけは年に1~2回は食べている気がする。マイボイスコムのアンケート調査によると、コンビニで調理品を買ったことがあると答えた人のうち、直近1年間に購入したことがある商品は「中華まん」が54.1%でダントツの1位。続いて「から揚げ」36.9%、「おでん」36.1%となっている(2011年)。寒い日に、レジ横の加温ケースについつい目が行ってしまうのは、決して私だけじゃないのだろう。

 日本のコンビニファストフードの代名詞となった、中華まん。読んで字のごとく、その原形は中華料理にある。「包子(パオズ)」という点心の一種だ。包子は、小麦粉に水や塩、酵母などを加えて練り、しばらく寝かせて発酵させたのち、豚肉や羊肉などの肉類や餡などの具材を詰めて蒸したもの。まさに中華まんである。

 「包子」から「中華まん」へ。その変化の間には、いったいどんな歴史が隠されているのだろう。

大正期までは不遇の時代

 実は、中華まんの原形は日本に少なくとも2度、上陸している。

 1度目は、14世紀の南北朝時代である。本連載の「あんパン」の回で詳しく述べたので詳細は省くが、禅宗の僧によって羊肉を使った饅頭が伝えられたとされている。

 だが、当時の日本では肉食を禁じていたため、羊肉の代わりに小豆が用いられ、中華まんとはまったく異なる和菓子の饅頭へと変貌を遂げている。