今回は、前回・前々回の「醤油」と並んで、どうしたわけか欧州に普及することになった微妙な日本の食材「わさび」について、ちょっと考えてみたいと思います。
わさびが世の中に広まった最大の理由は寿司屋が増えたことでしょう。
どうしたことか、英語で「Sushi Bar」と表記される店が、いつの頃からか、世界のあちこちに見られるようになりました。
本当の理由は分かりませんが、邪推するなら、第2次世界大戦後、とりわけ米軍が進駐してきてから、こうした日本食がまず米国に広まって、英語の名前がついたのではないでしょうか。
寿司カウンターがバーに見えた米国人
我々日本人は寿司屋のカウンターを見てもバーとは思いません。人によっては、そもそもは庶民のファストフードだった立ち食い以来の寿司の伝統をご存じの方もあるでしょう。
ちなみに私も東京都内・京成線の立石駅近くにある、昔ながらの立ち食いの寿司を愛好しており、ときおり訪ねずにはいられなくなります。
ただ、米国人にとっては寿司屋のカウンターはバーカウンター以外の何物にも見えなかったのでしょう。元をたどれば英国のパブの伝統に立ち返るのかもしれません。しかし、寒帯のグレートブリテン島では「フィッシュアンドチップス」を提供していたかもしれないカウンター、日本では活きのいい魚を提供していた。
このあたりを混同して「スシバー」なるものがまず米国で普及し、アボカドなどを使ったカリフォルニア巻きなどというものも誕生してから、世界各国に「米国経由のアジアンヘルシーフード」として、伝わっていったような気がします。
特に私たち日本人に気持ち悪く思われやすいだろうと感じるのは、寿司と一緒に照り焼きだ何だと、僕らなら絶対に寿司と一緒に出てこない、こってりした味の肉類を同じ店の中で提供していることです。