国連自由権規約委、日本に死刑廃止を勧告

南アフリカ最大の都市ヨハネスブルクのアパルトヘイト博物館内、死刑のホールに展示される絞首刑用のロープ〔AFPBB News

 2007年秋の、とある日の朝、私は霞が関の法務省を訪れました。行き先は大臣の執務室、福田康夫政権で再任されたばかりの鳩山邦夫法相が「死刑執行に関する勉強会」を開くということで、そこに團藤重光教授のメッセージの代読に呼ばれたものでした。

 引率してもらったのは現在は世田谷区長を務める保坂展人さん、当時は衆議院議員で「死刑廃止議連」の事務局長をしておられました。

 私はあくまで團藤先生のメッセンジャーボーイで、死刑の問題や死刑廃止運動で闘ってこられた歴戦の勇士の方々とは比べるべくもありません。

 とはいえ、東京大学の教官ということもあり、一定の役割を果たす必要があることは自ずから知れました。

 鳩山氏は法相就任直後に「死刑執行エスカレーター発言」(これは、死刑が確定したらエスカレーターに乗って物事が進むように自動的に執行されればよいのに、といった意味合いの発言をしたものでした)で物議をかもし、真意を問われる中からこの「勉強会」も開かれたものだとのことでした。

「伝統」は典拠にならない

 大臣の執務室に入ってみて驚きました。20人くらいいたでしょうか、ずらりと並ぶ法務省首脳の集団に、まず圧倒されました。

 鳩山大臣はむしろ表情を崩すのですが、50がらみの男性が2ダース近く厳しい表情で並んでいるのは、それだけでなかなかびっくりです。

 いま、記憶に頼って書いていますので正確な表現か定かでありませんが、鳩山さんはそこで、命をもってあがなうということは日本の伝統である、というようなことを発言しました。

 これに対して、日本を代表する死刑廃止運動の中心的な方々が、資料の裏づけをもって長年の主張を展開されました。それらは「聞き置く」という形で、記録などにはとどめられたかと思います。

 私が代読した團藤先生のメッセージは、鳩山さんの言う(よく正体が分からない)「日本の伝統」ではなく、具体的に年代を記して、平安時代には輸入された唐の制度を改め日本で死刑は廃止されていたこと、「日本の伝統」などを典拠に死刑を正当化することはできない、ということを主張していました。

 このメッセージもまた「聞き置」かれ、その日の勉強会は40分ほどでお開きになりました。