育成のキードライバーは、次の3点です。
1. 志をベースにした3年間の試練が与えられる。前述の通り、全ての社員は自分が立てた志をもとにして各自のキャリアプランを進めているが、このイニシアティブの対象者は、この志とキャリアプランについて経営者レベルを交えて討議し、承認された後、特別な3年間のストレッチした経験機会が付与される。
2. 対象者個々に役員クラスのメンターが指名され、3年間の育成にコミットし、責任を負う。メンターはキャリアプランの構築、その実践で成果を上げるための相談相手という重要な役割を果たす。また、成果が上がらない場合には、いったんFGLから外れることをアドバイスすることもある。
3. 3カ月に一度FGLセッションを実施する。内容は、柳井社長をはじめとした経営者との直接対話や、現場・現物・現実でのビジネスの深い理解(たとえば中国の生産工場訪問)、自らがリーダーとなる組織横断イニシアティブの柳井社長への提案・討議などである。
これらを通して、経営者としての視座・醍醐味・大変さを、通常業務よりも直接的に学ぶ。
ただし、一度抜擢されたらその立場は安泰と思わせないように、一定の割合で入れ替える(敗者復活の道は設けた上で)。常に全力で上記のプログラムに当たるようにする。
試練の例としては、以前お伝えしましたが、営業センスは優れているが国内だけで育ってきた、英語も覚束ない日本人をロシア事業の最高執行責任者(COO)に就かせたり、人事・教育の経験しかない人材をサプライチェーン全体を統括する責任者に登用したりです。あれらの人事はこのプログラムの一環でした。
それまでのキャリアからかなり飛躍して、試練を与えていることで、実践でもがき苦しみながら、自らがリードし、チームをつくり成果を出すことにチャレンジさせます。
一方、MIRAIプロジェクトは、未来のユニクロを担う若手層の発掘・抜擢・育成を目的としたプロジェクトです。FGLよりさらに若いジュニア層(20代から30代前半が主体)が対象です。
経営層からすると個々の人材の能力や可能性が未知数な層なので、グローバルに公募をかけ、自ら手を上げさせ、選考をして、60人程度に絞り込むプロセスをとっていました。FGLと同様に女性半分、日本人3分の1程度の構成となっています。