商品開発・MDの最先端・試行錯誤とその背景にあるメカニズム

 これまでの小売企業における商品開発・MDによる差別化の歴史を振り返ると、その出発点は、商品の仕入れによる差別化でした。ここでは、他店では手に入らない商品をいかに仕入れるかが差別化のポイントでした。その後、CVS/SM/DGSをはじめとするコモディティを扱う小売におけるNB品のMDは同質化し、次第に各社がPB品の強化へとシフトしていきました。

 今後のPB品開発という観点では、特にCVS/SM/DGSの領域において、惣菜カテゴリの商品開発・MD力が差別化要素として、ますます重要になっていくものと見立てます。その理由は、大きく2つあります。

 第一の理由は、惣菜は売上構成比が高く、目的買い商品になりやすいカテゴリの中でも、まだ品質差による差別化余地が残されたカテゴリである点です。

 CVS/SM/DGSにおける主要カテゴリに目を向けると、日配品・惣菜を除く、ドライ・チルドの飲料・食品領域は大手NB品メーカーのプレゼンスが高く、各社が商品開発に投資してきた結果、味や他の知覚品質要素におけるメーカー・商品間での差は小さくなっています。

 また、衣料用洗剤に代表されるような日雑・トイレタリー領域においても、内資・外資のFMCGメーカーのNB品のプレゼンスが高く、日々RN品・新商品が次々に投下され、小売企業にとっては知覚品質差をつくりづらいカテゴリでしょう。他方で、惣菜カテゴリは、相対的にはNB品メーカーのプレゼンスが低く、原材料・レシピ・調理/加工技術等で、品質差をつくり差別化しやすいカテゴリです。

 第二の理由は、今後も一定リアル店舗が残り続けることが想定される小売業態において、惣菜はリアル店舗での購買行動が残り続ける蓋然性が高く、今後もリアル店舗への来店促進の起点となり得るカテゴリであるという点です。

 消費のリードタイム/購買頻度/ブランド・商品へのスティッキネス等の観点で、衣類や、日雑・トイレタリー、ドライ食品・飲料(菓子類、ペットボトル飲料 等)が、まとめ買い・オンライン購買が進みやすいのに対し、消費のリードタイムが短いため都度買いされることが多く、多くの消費者がシーン・気分に合わせた買い回りニーズを持つ惣菜は、リアル店舗での購買が適しており、今後ECが拡大しても、リアル店舗での購買行動が一定程度残り続けるでしょう。

 こうした中、将来的に惣菜カテゴリで差別性を築くためには、高品質・高コスト効率な垂直統合型サプライチェーンモデルの構築がポイントになっていくでしょう。