実際、サプライチェーンを垂直統合し、高品質/低コスト/短リードタイムで、生鮮品・惣菜を提供するために、グローバルのトップの小売企業は、例えば植物工場への投資を進めています。
ウォルマートは2022年に米・カリフォルニア州を中心に植物工場を展開する垂直農業スタートアップのPlenty社に4億ドルを出資し、生産された野菜の調達・販売の合意を実現し、一部店舗での販売を開始しています。
従来のPB品開発・MDに留まらず、惣菜カテゴリにおいて、投資のROIを確保しながらサプライチェーンを統合できれば、小売企業にとっての差別化の切り口となるでしょう。
店舗形態・フォーマットの最先端・試行錯誤とその背景にあるメカニズム
小売業態の店舗形態はもともと、いわゆるパパママストアと呼ばれるような個人商店に始まり、その後百貨店・SM・DGSなどの業態の大手チェーンが生まれ、フォーマットも進化してきました。
商圏サイズに合わせた地方での店舗の大型化/都市部での小型化が進み、また出店立地や併設施設に合わせたフォーマット・MDが開発されてきました。
加えて、客数・売上のシナジーにより坪効率を上げるべく、ビックカメラ×ユニクロや、蔦屋書店×スターバックスなど、複数業態の共同出店という形態も生まれました。
さらには、従来の売り方ではなく、事前注文・決済して店舗で商品を受け取るようなリアル店舗の使い方・売り方も生まれています。
では、今後はどのような店舗形態・フォーマットが残っていくのでしょうか。業態・立地・地域等によって様々なシナリオが考えられますが、一部の大都市圏を除き、日本の多くの地域で人口減が進むことを見据えると、各業態が店販を向上するために取り扱いカテゴリを拡大していき、業態間でも取り扱い商品の同質化が進んでいくのではないでしょうか。
また、規制緩和・改変により、これまで以上に各業態が取り扱える商材の差が縮まり、差別性が失われていく未来も予想されます。例えば、処方薬であれば、オンライン診療・服薬指導/医薬品販売等についての規制が緩和された結果、ファミリーマートのファミマシーのように、処方薬をコンビニで受け取れるサービスも生まれています。
こうして、商圏人口が減りゆく中、業態間の取り扱いカテゴリの同質化が進むと、結果として他業態・他店より来店動機となりやすい商品・サービスを提供し、高い坪効率を実現可能な業態・店舗が残っていくのではないでしょうか。
<連載ラインアップ>
■第1回 大企業を中心に“潜在的なM&A原資”が積み上がり中 大型の企業買収が予想される注目の業界は?
■第2回 三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事…なぜ今、総合商社はPEファンドとの戦略的連携を強めるのか?
■第3回 ウォルマートの植物工場への4億ドル出資、ファミリマートの「ファミマシー」高効率実現のための差別化戦略とは(本稿)
■第4回 小売業の海外展開の基本線は「M&A」、セブン-イレブンのスピードウェイ買収に改めて学ぶ「価値向上」とは?
■第5回 脱炭素で不確実性を抱える電力市場…「火力発電」「再エネ」で考えるべきシナリオと事業のリスクマネジメントとは?(1月10日公開)
■第6回 大手電力7社が燃料調達の算定式を見直し 地政学リスクが促したリスクマネジメントの構造変化とIndexationの管理とは(1月14日公開)
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