「PIXキー」から相手を探し、送金先を設定する仕組みだ。相手の口座情報も必要ない。平日の昼間はもちろん、休日、夜間でもわずか数秒でお金を送れる。電子商取引の場合はパソコンに表示されるQRコードを読み取ることで手続きでき、店頭でもスマートフォンで読み取れば、簡単に支払いが完了する。現金を持ち歩く必要性は劇的に低下した。
小売り大手ポンジアスカルのフレデリコ・アロンソ取締役は「現在は現金やデビットカードを使っている支払いの大部分がPIXに置き換わる可能性が高い」とみている。電子商取引大手メルカドリブレでは22年時点で、出店者の7割がPIXに対応していた。対応している店舗の売上高は、未対応の店舗よりも平均で1割多いという。
クレジットカードを上回る決済数
PIXの2023年の年間決済件数は約420億回で、金額は17兆レアルだった。2023年10~12月の決済件数は約131億回と、デビットとクレジットカードの合計(約120億回)を上回り、逆転した。
オンライン決済を仲介するイーバンクス(EBANX)の報告書は、電子商取引(EC)でのPIXの決済額は24年の1110億ドルから26年には1845億ドルに増えると予測している。占有率は24年の34%から26年には40%となり、クレジットカード(42%)に匹敵すると予測している。
銀行の口座から振り込む場合には1件あたり1020レアル程度の手数料がかかるのが一般的だ。個人でPIXを使う場合は手数料がかからない。国際通貨基金(IMF)が23年7月に公表した報告書によると、企業がPIXを使う場合は取引額の0.33%かかる。
それでもデビットカード(1.13%)やクレジットカード(2.34%)に比べると大幅に安い。銀行振り込みが減る一方で、全体の決済数は増えている。PIX経由で電子決済を使う人が増えて、送金需要を喚起している実態が浮かぶ。