■ 収益成長の要となるCRO
ここまで述べてきた通り、現代のビジネス環境は、急速なテクノロジーの進化、顧客ニーズの多様化、競争の激化などにより、非常に複雑化しています。こうした中で、企業が持続的に成長するためには、収益に直結する戦略の一貫性と実行力が求められます。
従来、収益に関する業務は営業部門に一任されることが多かったのですが、マーケティングやカスタマーサクセスも大きな影響をおよぼすようになっています。特に欧米ではSaaS企業が成長をする過程で、カスタマーサクセスの組織が拡大していきました。
新規顧客獲得の営業の動きと、既存顧客の契約を更新するためのカスタマーサクセスの動きで方針が異なり、対立構造が起きてしまうことがあります。顧客にとってもシームレスな顧客体験を得られないことになってしまうでしょう。
CROの設置は、レベニュー組織のサイロ化や対立構造を排除して統合し、企業全体としてのレベニュー戦略を統一するために不可欠です。成長のための総合的な戦略をCROで立案し、実行に移す責任を担い、部門間のシナジーを最大化します。
なお、必ずしもCROという名称ではなくチーフグロースオフィサーなど企業によって名称は異なりますが、本書ではレベニュー組織全体を統括する立場を示す表現としてCROと記載します。
■ CROの仕事とは何か
CROの役割は多岐にわたりますが主に次のような役割を担います。
・収益成長の戦略立案
CROの最も重要な責務の1つは、GTM戦略を含む収益成長のための戦略を立案することです。これには、市場分析、競合分析、顧客ニーズの理解などが含まれます。これらの情報をもとにして、短期的および長期的な収益目標を設定し、それを達成するための具体的なアクションプランを策定します。
この戦略立案には、データドリブンなアプローチが求められ、データ分析の結果をもとにして柔軟に戦略を修正することも含まれます。それを踏まえてレベニュー組織は顧客のライフサイクル全体を管理し、顧客満足度を高めるための戦術設計や施策実行につなげていくことになります。