ポジティブ・フィードバックの方法

 部下に感謝する際に、多くの上司は「ご苦労さま」や「Good job!」のような短い表現を用います。これでも何も言わないよりはましですが、その効果は限定的です。

ポジティブ・フィードバックをする際にも、第4章で紹介したネガティブ・フィードバックの3つのステップと同様の方法を使うとよいでしょう。そうすれば、フィードバックの効果がより一層期待できます。

 アメリカ人と一緒に働いたことがある人ならば、アメリカ人は相手をほめたり感謝したりするときに、かなりの大げさな言葉を使うことに気づいたと思います。たとえば、「great」「wonderful」「terrific」「fantastic」「super」などです。

 多くの日本人はそれを聞いて、「そんな言葉は自分の口からは出てこない」と感じるかもしれません。私は、ポジティブ・フィードバックは推奨しますが、そんな大げさな言葉を用いることをすすめているわけではありません。

 それより、相手の行動について具体的に語ることの方が効果的です。同様に、ポジティブ・フィードバックは相手の人間性に対してコメントするわけではありません。「あなたはすばらしい」と言うのではなく「あなたがしたことはすばらしい」と行動に焦点を当てて伝えるのです。

 フィードバックをするときに3つのステップを使うのは、部下の行動について、なぜそのことが重要なのかに言及するためです。上記で紹介したような、アメリカ人がよく使う大げさな形容詞を用いたり、相手の人間性に関するコメントをすると、多くの日本人が心配するように、それを聞いた相手は、これ以上、改善する必要はないと思うおそれがあります。

 しかし、行動に関して話すなら、特定の行動だけに焦点を当てることができます。誰にも望ましい行動と望ましくない行動の両方があります。こうすることで、バランスのとれたフィードバックができることになります。

<連載ラインアップ>
第1回 スティーブ・ジョブズの言葉に学ぶ 部下の士気を上げるには、なぜ“ムチ”より“アメ”がはるかに有効なのか?
第2回 なぜ部下は、すぐにあなたを頼ってしまうのか? 指示待ち型の部下を自ら動かすための「11の戦略」
■第3回 なぜアメリカ人は、大げさな言葉で相手をほめるのか? 部下の心に響く「ポジティブ・フィードバック」とは(本稿)
■第4回 グーグルでも実証 「心理的安全性」を高め、チームのハイパフォーマンスを生み出すための舞台設定とは?(11月22日公開)
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