サーキュラーエコノミー化で雇用は700万人純増

 その反面、天然資源の需要が減れば、天然資源の採掘・採取に関する雇用は減る。国際労働機関(ILO)は、銅、鉄鉱石、石炭、ニッケルの採掘労働者が2030年までに2520万人減少し、鉄鋼や合金を鉄鉱石から一次生産する労働者も1560万人減少すると試算している。使い捨て製品が減ることで、木材や食器の製造に係る労働者も1100万人減少していく見通しだ。

 反対に、サーキュラーエコノミー化による新規雇用創出効果は、リサイクルによる鉄鋼の二次生産で1750万人増、家具や家電の修理や中古販売で1670万人増、中古品の卸売流通で770万人増、再生木材加工で300万人増、自動車修理及び中古販売で430万人増と見積もられている16。これらの雇用減と雇用増の双方を合算すると、700万人から800万人の純増効果が得られるという。

資源採掘イノベーションでは2800万人の新規雇用

 サーキュラーエコノミー化を可能な限り実現したとしても、UNEPの「サステナビリティ・シナリオ」が示すとおり、天然資源の新規採掘をゼロにすることは難しい。そのため、新規採掘に関しては、生態系を破壊しない技術開発やイノベーションが必要となる。

 具体的には、資源探査の段階では重要な生態系を保護するために、非侵襲的な探査を実行することや、資源採掘の段階では水銀、硝酸、鉛系のような毒性の高い化学物質の代わりに無害で非化学的なプロセスを用いる検討が進められている。採掘時に使用する水の節約や、廃水リサイクルのための技術開発も不可欠だ。

 資源開発に必要になる道路や送電線などのインフラ整備でも、設備を共同インフラ化することで必要最小限に抑えることもできる。鉱石から貴重な成分を抽出した後に残る一般的な副産物(鉱滓 こうさん)は、鉱山付近に設けられたダムに堆積・貯蔵されているが、決壊すると周辺地域に破滅的な打撃を与えるため、管理のための人員も必要となる。開発が終わった廃坑を修復していく工程も生まれてくる。これらによって2900万人の新規雇用が生まれるという17

16 International Labour Organization (2019) 「Skills For A Greener Future: A Global Review」

17 World Economic Forum (2020) 「New Nature Economy Report II: The Future Of Nature And Business」