その際は、普段の5割増しの熱量で、本部長自身が何を実現したいのか、実現に向けた障壁やその障壁をどうやって乗り越えるかを伝えるように推奨されているそうです。この後に行われた従業員調査では、ビジョンに共感できている人ほどエンゲージメントのスコアが高いということがわかっています。

 また、富士通では多様な働き方を実現するうえで従業員1人ひとりが何に価値を置き、どんな問題や課題を抱いているのかを把握するために、1on1をうまく活用している様子がうかがえます。

 EXの高い職場とはどのようなものかと考えると、そこで働く個々人への適時適切なフォローがとても重要な要素になっています。そのために有効な施策の1つが1on1です。

 同社では、月1回以上の1on1推奨キャンペーンを全社的に実施しており、定期的に行われる実施率の確認によると、その実績は7割を超えるとのことです。

 実施回数だけでなく、“質”の向上を図る施策も行われています。

 例えば、マネジャー層と社員のアンケートの分析から優れたマネージャーの特性を科学的に導き出すプロジェクト「FMD(Fujitsu Management Discovery)」から得られた知見が部下の自律性を引き出すコーチング型マネジメントに反映されています。理論と実践を通じて、1on1を行う上司自身も優れたマネージャーへの成長が期待できます。

 また、1on1のクラウドツールを導入し、日常的に1on1ミーティングができる仕組みを構築しています。ユニークなところでは、1on1の意義や実施上の疑問などの理解促進を図る「ワン・オン・ワン!!劇場」という4コマ漫画を配信しています。

 エンゲージメント調査を分析すると、1on1の実施頻度や有益度とエンゲージメントのスコアに相関が見られました。特に、有益度の低い1on1を体験した従業員は、実施していない従業員よりもエンゲージメントが低いスコアにあることがわかりました。

 そこで、1on1の改善点を直属上司だけではなく、直属上司の上司にもフィードバックする取り組みを行いました。その結果、直属上司に対するコーチングがなされるようになり、部下と直属上司双方のエンゲージメントのスコアが向上したそうです。

<連載ラインアップ>
第1回 高報酬だから人材が集まるわけではない、「ヒト」の資本価値を見極める難しさとは?
第2回 社員誰もが会社に対し自由に声を上げられる、メルカリの独自施策「オープンドア」とは?
第3回 社員が異動希望先に“応募”する、パーソルグループの「キャリアチャレンジ」が組織を強くする理由
第4回 コロナ禍前から場所や時間に縛られない働き方を実践、ユニリーバ・ジャパンが目指すEXとは?
■第5回 社会のDXを支援する富士通は、なぜ全社DX「フジトラ」において従業員とカルチャーの変革を重視するのか(本稿) 
■第6回 全社員の声で組織を動かす、富士通の「VOICEプログラム」が変えた従業員の働き方とは?(10月8日公開)

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