■ 働き方の自己決定の尊重

 パフォーマンスベースのカルチャーがあるユニリーバ・ジャパンでは、チームとしてのパフォーマンス、クリエイティビティ、生産性が高まる働き方の追求を常に考えているとのことです。

 この考えに基づいて、オフィスで就業することの意義を4C(Connect, Collaborate, Create, Celebrate)で表し、東京・目黒の本社をこの働き方が実現できるレイアウトに変更したのが2020年12月のことでした。

 ワークプレイスを自律的に選べる同社では、このオフィスをはじめ2024年現在、週に2日から3日の出社を奨励しています。オフィス外での働き方については、上司の承認のもと、自律的に決定することができます。これは「Work from Anywhere and Anytime(WAA)」という制度として運用されています。

 その名称のとおり、従業員が働く場所や時間を自由に選ぶことができるこの制度が導入されたのは、新型コロナウイルス感染症の拡大でリモートワークが広がる2年以上前の2016年7月であり、当時としてはユニークな働き方であったことから注目を集めました。そのとき、社員に次のような運用ルールが示されました。

  • 上司に申請すれば、理由を問わず、会社以外の場所(自宅、カフェ、図書館など)でも勤務可能
  • 平日の5時~22時の間で自由に勤務時間や休憩時間を決定可能(コアタイムなし)
  • 1日の就労時間を決めずに1カ月の所定労働時間を設ける。就労時間が足りない月があれば、翌月調整可能(最大2カ月間)
  • 原則全従業員が対象で、期間や日数の制限なし

 働く場所や時間の選択肢が広がったことで、従業員からはモチベーションの向上につながったなど、好意的な反応が寄せられました。実際、制度導入から10カ月後の2017年4月に行った従業員アンケートでは、一度でもWAAを利用した従業員が92%にのぼり、そのうち75%の人が「生産性が上がった」、33%の人が「幸福度が上がった」と回答しています。

 2019年7月には「地域 de WAA」と称する、自治体と連携した地域課題解決型のワーケーションが実施されました。これは、地域貢献によるEXの充実を図るとともに、イノベーションの創出を目的にする取り組みでした。そこでは、次のようなことが行われました。

  • 提携自治体内の施設を“コWAAキングスペース(コワーキングスペース)”として従業員が無料で利用可能
  • 提携自治体が地域課題の解決に関わる活動を指定。従業員がそれに参加すると、宿泊費が無料または割引
  • 現地までの交通費は自己負担、保険料は会社負担

 また、毎週金曜日の午後は「U-Time」という、会議は原則なしで自己成長に使える時間帯があります。

 社内でトレーニングを受ける、キャリアについて上司と話し合う、EDI(エクイティ、ダイバーシティ、インクルージョン)の推進といった経営課題についての勉強会グループに参加するなど、自分の学びやウェルビーイングのためにこの時間を使うことが推奨されています。従業員1人ひとりの成長が会社の成長につながるという考えが背景にあるからです。