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『マネジメント』(ダイヤモンド社)をはじめ、2005年に亡くなるまでに、39冊に及ぶ本を著し、多くの日本の経営者に影響を与えた経営学の巨人ドラッカー。本連載ではドラッカー学会共同代表の井坂康志氏が、変化の早い時代にこそ大切にしたいドラッカーが説いた「不易」の思考を、将来の「イノベーション」につなげる視点で解説する。

 連載第2回は、「変化」を利用し、イノベーションを起こすための心構えを考える。

連載
ドラッカー不易流行

ドラッカー学会共同代表の井坂康志氏が、変化の早い時代にこそ大切にしたいドラッカーが説いた「不易」の思考を、将来の「イノベーション」につなげる視点で解説します。  

変化を当然とする姿勢

 こんなことをドラッカーは語っているのだが、どう思うだろうか。

「企業家精神の原理とは、変化を当然のこと、健全なこととすることである」(『イノベーションと企業家精神』(ダイヤモンド社、1985年、以下引用同)

 変化が当然のこととは頭では分かっているけれど、やはり抵抗があるものだ。変化は怖い。変わりたくない。慣れ親しんだ部署から別の部署への異動を命じられたら、誰だって心中穏やかではいられない。

 そこへドラッカーは付け加える。変化は生かすべきもの、もっと言えば「利用すべき」ものだと。こう考えると、いくらかは見方も変わってくるのではないか。

「利用すべきもの」という言い回しが特に私は気に入っている。とにかくドラッカーの言うことは行動志向であって、哲学とか思想ではない。案ずるより産むがやすしである。評論家的な態度に徹するならば、記事や論文は書けるだろうがイノベーションを起こすことはできない。

 要するに、イノベーションとは姿勢なのだということである。見ているのでなく、状況に介入していく。川に飛び込んで泳いでみる。まずそこが大事な点である。