人事院 人事官の伊藤かつら氏(撮影:酒井俊春)

 公務員の働く現場において、「書類は紙」「会議は対面」といった思考が根強いことは想像に難くない。かつての人事院も例外ではなく、こうした紙だらけの組織の改革に、外資系IT企業出身の人事院人事官、伊藤かつら氏が取り組んだ。組織カルチャーを大きく変えた、そのDX(Digital Transformation)推進の秘策に迫る。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第6回DX人材フォーラム」における「特別講演:DXのもたらす組織改革への可能性/人事院 人事官 伊藤かつら氏」(2024年6月に配信)をもとに制作しています。

人事院とは、国家公務員の人事制度を担当する行政機関

 伊藤かつら氏が人事官を務める人事院は、国家公務員の採用、働き方、給与などの人事制度を担当する国の行政機関だ。

 国家公務員の現場における人事の運用はそれぞれの府省で行われるが、人事院はそれらの府省の人事で共通して必要になる規則の制定や基準の策定を行っている。

 人事院は法令上、3人の人事官で構成されるが、実際には実務を担当する部門が設けられている。実務を担当するのは、事務総局に置かれた内部部局、公務員研修所、地方事務局(所)で、人数規模にして約600人の組織となっている。

 こうした人事院の組織において、どのような課題があり、どのような変革を行ってきたか。以下では、外資系IT企業から就任した伊藤氏が、人事院で行ったDXの具体的な施策と、進め方について語った講演の骨子をお届けする。