ビジネスパーソンであれ、企業組織であれ、ビジネスでは「一回切り」「たまたま」「まぐれ」の成功は通用しない。顧客が欲するサービス・商品を「継続的に」「必然的に」「狙い通りに」提供し続けて、初めて「仕事」といえる。つまり、仕事とは「人の心を捉え続けること」であり、それを実現するために必要なのは、顧客の「真のニーズ」を的確に捉えるためのマインドセットと仕組みづくりだ。本連載は、『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(田尻望著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。キーエンス出身の経営コンサルタントが体系化した「ニーズの捉え方」の考え方とノウハウの一端を紹介する。
第3回は、法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を捉えるためのアプローチ方法について解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 “仕事ができる人”が捉えている顧客の「ニーズの裏のニーズ」とは?
■第2回 法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を知るために押さえたい6つの価値とは?
■第3回 人間関係が悪化し、5人の営業が辞めたことで失われた売上を考える意味とは? (本稿)
■第4回 「社内コミュニケーションをよくしたい」の裏に隠された重要なニーズとは?
■第5回 「絶対に食いっぱぐれることのない」組織になる方法とは?
■第6回 “卓越した成果”を再現し続ける組織は、なぜ「ひし型」になるのか?
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法人顧客の「ニーズの裏のニーズ」を特定するためのアプローチ方法
では、法人顧客を相手にしているビジネスパーソンは、クライアントに対してどのようなアプローチをすべきでしょうか?
例えば、あなたがコンサルタントだとして、クライアント企業の担当者から「社内コミュニケーションを改善したいのですが」という相談を受けたとします。
ただ、この発言からは、お客様の顕在ニーズしか読み取れません。「では、早速コミュニケーション改善のための研修をご用意しますね」と、顕在ニーズに応じた解決策を提案することしかできなければ、あなたは単なる「御用聞き」にとどまってしまいます。
ここでは「社内コミュニケーションを改善したい」という発言(ニーズ)の裏側に潜んでいる「ニーズの裏のニーズ」を捉えたソリューションを提供しなければなりません。
そのためには、「ちなみに、なぜコミュニケーションを改善したいのですか?」という質問を投げかける必要があります(ここまでお読みいただいた方は、「ニーズの裏のニーズ」を捉える「質問のスキル」がかなり身についてきていることだと思います)。
お客様との会話が次のように展開したとしましょう。
あなた 「ちなみに、なぜコミュニケーションを改善したいのですか?」
お客様 「実は最近、社内の人間関係がギクシャクしていて」
あなた 「それは、大変ですね・・・。社内がギクシャクしているのを見るのは嫌な気持ちになるでしょうし、働かれているみなさんもお辛いでしょう。私としてもできることがあればお力になりたく、もう少し深く聞かせていただきたいのですが・・・人間関係がギクシャクしていることで、何かまずいことが起きているんですか?」
お客様 「営業の人間がどんどん辞めていってるんです」
あなた 「それは困りましたね。どれくらい退職者が出ているのですか?」
お客様 「去年は一人も辞めなかったんですよ。それが、今年はもう5人も辞めているんです。何とかこの流れに歯止めをかけたいんですが… …」
あなた 「そうですか、それは本当に大変ですね。そうしましたら、営業の方がこれ以上辞めないために、どのような解決策がベストか、しっかりと吟味検討したうえで、御社にとって最適な研修をご提案させていただきます」