MS&ADインシュアランスグループホールディングス サステナビリティ推進部 TNFD専任SVP/MS&ADインターリスク総研 基礎研究部 基礎研究グループ フェローの原口真氏(写真:sarayut_sy/Shutterstock.com)

 2023年9月に「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」の最終提言「TNFD v1.0」が発表された。TNFDは企業の経済活動における自然環境への依存度や生物多様性への影響などを把握・評価し、情報開示するための枠組みだ。2021年6月にG7やG20の支持を得て立ち上げられ、世界各国の企業が高い関心を寄せている。

 日本最古の環境NGOである日本自然保護協会が、企業と生物多様性をテーマに開催する「企業向け生物多様性セミナー」の第2回を開催。同セミナーではMS&ADインシュアランスグループホールディングスのサステナビリティ推進部 TNFD専任SVPである原口氏が、TNFD v1.0を紹介するとともに、今後の生物多様性と金融の動向、企業における生物多様性に対する取り組みの重要性について解説した。

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企業経営において、なぜ、今「自然」なのか

原口 真/MS&ADインシュアランスグループホールディングス サステナビリティ推進部 TNFD専任SVP/MS&ADインターリスク総研 基礎研究部 基礎研究グループ フェロー

1996年にMS&ADグループに参画の後、環境リスクの調査研究、コンサルティングを手掛け、環境課題を解決するためのオープンイノベーションプラットフォームを数多く設立、運営。とくに、ビジネスと生物多様性の領域は、2000年から手掛けている。環境省の次期生物多様性国家戦略研究会委員やネイチャーポジティブ経済研究会委員など、官公庁の委員を歴任。2021年10月から自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)メンバーとして、フレームワーク開発に従事している。

 セミナーは、2021年10月から自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)メンバーも兼務しフレームワーク開発に従事する原口氏の、TNFDの紹介から始まった。

 TNFDは自然にプラスとなる活動に世界のお金が流れるように向け、自然と企業がともに繁栄できる世界経済への移行を目指すための枠組みだ。情報開示の枠組みを検討するためのタスクフォースには世界の名だたる機関投資家や事業会社等の上級管理職が参加し、また、TNFDフォーラムには日本から多くの企業が参加している。特に金融業界におけるTNFDへの関心は高い。

 タスクフォースの日本人メンバーである原口氏は、自身が所属するMS&ADグループにおける中期経営計画に盛り込まれた重点課題として「地球環境との共生(Planetary Health)」を挙げる。「Planetary Health」では、生物多様性を含む自然資本の持続可能性向上、つまりネイチャーポジティブを、気候変動への対応と同じ重みで捉えている。

 そもそも、なぜ、「自然」なのか。MS&ADグループはじめ損害保険業は、保険契約者が損害を被った場合に保険金を支払う。火災保険であれば、その支払い対象には風水災も含まれる。原口氏によれば、近年は世界中で気候変動の影響で特に洪水などの水災が増えたため支払い額が年々増加し、‟水災”保険のような状況になってきているという。

 自然災害が増える一方で、地域の少子高齢化によって、被災した地域が自らの力をもって立ち直る社会の「レジリエンス(回復力)」が下がっている。少子高齢化で地域経済が停滞して、保険契約が減っていく一方で、地域の自然に投資せず自然に根づくレジリエンス力が低下して社会のレジリエンスが上がらないと、自然災害発生時に被害が拡大して保険金の支払額が増える。事業会社に例えれば、売り上げが増えずに支出だけ増えていく状況になってしまう。つまり、保険会社にとって、気候変動や自然の損失は自社の経営を脅かす存在なのである。

セミナーはリアル&オンラインのハイブリットで開催された