地銀では国内トップの資産残高を有するふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は、デジタルへの取り組みが積極的な銀行グループとしても知られる。日本初のデジタルバンクである「みんなの銀行」や、資産管理やクーポンなどの生活密着アプリ「Wallet+」などのサービスを次々とリリースしているが、既存の銀行サービス、業務プロセスのデジタル化にも余念がない。FFG全体のDXのリーダーである藤井雅博氏に、同社のデジタル変革の現在地を聞いた。
既存ビジネスの高度化と新領域の両面でDXを進める
――FFGのDX戦略で、基本に据えているものは何でしょうか。
藤井雅博氏(以下・敬称略) 現在当社は、2022年からスタートした第7次中期経営計画を推進しています。そこではお客さま本位の営業改革を中心に据えていますが、同時に、2030年に向けた長期ビジョンを策定しました。
長期ビジョン2030は、「ファイナンスとコンサルティングで、全てのステークホルダーの成長に貢献する『ザ・ベスト リージョナルバンク』になる」と策定しています。その実現のために、サービス開発力、ソリューション力、組織力の3つの力を持たなければいけないと考えており、これにはデジタルの活用が不可欠なため、全社的なDXに取り組んでいます。
当社のDXは、既存領域(既存の銀行ビジネス)と新領域に分けて進めています。既存領域では、2016年に新しい銀行サービスである「iBank構想」を開始しました。これは、金融と非金融をつなぐ新しい金融サービスの形である「Wallet+」につながっています。
一方の新領域では、やはり2016年に新たな「デジタルバンク構想」を開始し、日本初のデジタルバンクである「みんなの銀行」を開業し、2021年5月からサービスを開始しました。
この2つの流れは、どちらも銀行本体とは切り離された、いわゆる「出島」的な形で進めましたが、銀行内部でもDXの取り組みを進めるため、2017年にデジタル戦略部を新設し、銀行サービスやバックオフィスのシステム開発をアジャイルに進める体制を整えてきました。
実証実験と改善を繰り返すチームを社内に作り、さまざまなサービスを開発していますが、デジタルバンクや「Wallet+」の開発経験も生かして、全社のDXを進めていくため、2022年に社長直轄のDX推進本部を設立しました。 2023年度は、FFG本体のデジタルサービスである「新バンキングアプリ」を7月にサービスインさせ、「法人ポータル」サービスを10月18日(水)に本格展開する予定です。
――既存の銀行を進化させたサービスと、デジタルバンクの2方面にビジネスを展開していますが、どうすみ分けていくのでしょうか。
藤井 みんなの銀行は、スマートフォンで全てのお取引やサービスが使えるアプリで、若い人を対象にした銀行です。デジタルで完結する銀行なので、空間を超え、全国どこに住んでいてもサービスが利用できます。
これまでの銀行の利用イメージを一新するサービスを提供する事業です。まだスタートして間もないため、主流になるには時間がかかりますが、将来に向けて対応していこうという狙いで進めています。
一方の「新バンキングアプリ」が担う、既存銀行のデジタル施策ですが、当社は福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行、福岡中央銀行の4つの銀行があります。各行の地域のお客さまに、現在のサービスをより便利に使っていただく視点で開発しています。
ここでは、デジタルで完結させるというよりは、デジタルと従来の店舗を融合して、デジタルの活用で担当者のコミュニケーションやサービス品質の向上を目指し、お客さまによりよいサービスを提供する意味で、みんなの銀行とは違ったアプローチになると思っています。