モノづくり現場で必要とされる一切の商品「プロツール」を卸売する専門商社のトラスコ中山は、顧客最優先を具体化した企業メッセージ「がんばれ!! 日本のモノづくり」を経営や事業のブレない基軸としている。同社にとってデジタル・トランスフォーメーション(DX)は、この企業メッセージを具現化していくための手段にほかならない。取締役で同社DXのリーダーである数見篤氏は、変革の鍵は「異動」と「覚悟」にあると考えている。

先読み納品で、最適な品揃え目指す

「ベストなものが、もうそこにある。そうした状況を目指しています」

 トラスコ中山で取締役をつとめる数見篤氏は、同社のDXの当面の目標をこう端的に表現する。「最速」「最短」「最良」の納品を実現し、注文の手間や納期までの時間なしに、モノづくり現場で作業者がプロツールを使っていられる状況をさす。この状況を実現するためのサービスの一つとしてすでに始めているのが、第3回で紹介した「MROストッカー」だ。

トラスコ中山 取締役 経営管理本部 本部長 兼 デジタル戦略本部 本部長 数見篤氏。(撮影:今 祥雄)

「さらに物流を進化させなければなりません。すでに導入している物流機器やロボット以上に生産性を高められる技術を導入し、適切に必要なものが品揃えされている状況を緻密につくりあげる必要があります。需要予測についても、人工知能(AI)のすさまじい進化に着目し、先読み納品への活用などを目指しているところです」(数見氏)

 同社は2021年から2026年までを「DX2.0」の期間と位置づけ、数見氏の述べるような取り組みを「TRUSCO HACOBUne(ハコブネ)」プロジェクトとして、他企業や名古屋大学と連携のうえ進めている。

トラスコ中山のDX戦略。(画像提供:トラスコ中山)
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