人材を成長の起点に据える「人的資本経営」が注目されているが、日本企業にとっては、まだ緒についたばかり。経営戦略と結びつき、人事部門と事業部門をまたぐ広範な取り組みとなるため、本腰を入れたいものの、どこから、どう始めたらよいかわからない企業も多いのではないだろうか。
本連載では、デロイト トーマツ コンサルティングにおいて人材変革を手掛けるコンサルタントが、人的資本を中心に据えたこれからの経営改革について実務の視点で徹底解説。第4回は、人的資本経営に本当に必要なデータの見極め方から、分析・管理の手法、グループ全体やグローバルで役立てるためのポイントについて解説する。
(*)当連載は『「人的資本経営」ストラテジー』(デロイト トーマツ グループ 人的資本経営サービスチーム著/労務行政)から一部を抜粋・再編集したものです。
<連載ラインアップ>
■第1回 「人的資本経営」成否の鍵を握る?「人的資本中計」とは何か
■第2回 未来型CHROの役割とは?これからの人的資本経営で求められること
■第3回 人的資本経営を支える「未来型」HRテクノロジーの姿とは
■第4回 人的資本経営に不可欠な「データの標準化」が、日本企業でうまく進まない理由(本稿)
<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者をフォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
●会員登録(無料)はこちらから
3 人的資本データ基盤整備のアプローチ
これまで述べてきたとおり、人的資本経営の実現に向けて、テクノロジーにかけられている期待は非常に高くなってきている。
従来の人事システムやタレントマネジメントシステムに加えて、エンゲージメントを高めるためのツールやデジタルワークプレイスを中心にした、従業員間コミュニケーションやコラボレーションを促進する基盤も整えられつつある。
本項では、多様化するテクノロジーとそれに蓄積すべきデータをいかに収集・活用していくべきかを考えたい。
[1]データ統合プラットフォームとデータモデリング
人的資本経営の健全性をモニタリングするとともに、改善に向けた課題設定・施策立案に関わる意思決定をサポートする示唆を提示するためには、グローバル・グループの人事業務で利用されている人事・タレントマネジメントシステムのみならず、各種コミュニケーションツールやエンゲージメントサーベイ結果などからもデータを収集して、それらを統合的に管理・分析する仕組みの構築が必要となる[図表9−8]。
そのためには、まずは各種人事業務機能が正常に運用されているかを示すためのKPIやそれに準じる指標を定義し、それに必要なデータを定義するというトップダウンのアプローチが考えられる。具体的には、[図表9−9]のようなプロセスでプラットフォームを検討していく。