* 本コンテンツは以下講演の【講演動画】と【全文採録記事】で構成しています *
第3回 戦略人事フォーラム
特別対談「人的資本経営を意識した人事の考え方・進め方」

開催日:2023年3月15日(水)
主催:JBpress/Japan Innovation Review

 近年、「人的資本経営」という言葉が広く認知され、人材を「資源」ではなく「資本」と捉え、その価値を引き出すことで企業価値の向上を目指す企業が増えています。今回、人事の視点から人的資本経営の課題と向き合い、人事のあるべき姿について対談を繰り広げたのは、三井化学 取締役 専務執行役員CHROの安藤嘉規氏と明治大学専門職大学院 教授の野田稔氏です。

 対談の冒頭にて、野田氏はまず人的資本経営の背景について解説します。野田氏によれば、人事は企業戦略を実現するためのものであるという戦略人事の考え方が登場したのは、今から約20年前のこと。さらに、社員を顏の見えない機械の一部のようにみなすのではなく、一人ひとりが価値を生む存在であると認識する現在の「人事」が形成されたのは、米国にて「ミシガンモデル」や「ハーバードモデル」といったHRM(人的資源管理)の考え方が登場した1980年代半ばまでさかのぼります。

 しかしながら、こうした人事のあり方が登場してから約40年が経つ現在も、いまだ労務管理的な発想で人事を行う企業も多い、と野田氏。ルーティンワークを効率的にこなすことで付加価値を生むビジネスモデルにおいては、管理型の人事は有効である一方、新たなビジネスモデルの創出が求められる現在のような環境においては、人事においてもパラダイムチェンジが求められていると語ります。

 こうした中、人的資本経営について先進的な取り組みを進めている企業の1つが三井化学です。安藤氏は、同社の長期経営計画VISION2030において、ソリューション型ビジネスモデルの構築やサーキュラーエコノミーへの対応強化が喫緊の課題であると解説した上で、その実現に資する人材戦略について紹介します。安藤氏は、経営戦略の変化をアジャイルに捉え実効性のある人材戦略・施策を具現化するため、「個の力」を重視し、「自主・自立・協働」を体現する「挑戦し続ける組織」への変革を目指しているといいます。

 そして、このような人材戦略に基づき、同社では即戦力人材の積極採用やキータレントの多様性拡大によるポートフォリオ変革や、「新しい働き方」を支援する人事施策、メンター制度の導入、グループ統合型人材プラットフォームの導入など、さまざまな独自性ある取り組みを展開しています。

 人的資本経営を推進する上で、人事が押さえるポイントとは何か。安藤氏による三井化学の具体的な取り組み事例と、さまざまな企業の人事を知る野田氏による解説から、これからの人事のあるべき姿が見えてきます。

【TOPICS】

  • 「人的資本経営」の考え方が生まれた背景と「人事」の歴史
  • 三井化学の人材戦略①|経営戦略と連動し、自主・自立・協働を体現する組織へ
  • 三井化学の人材戦略②|即戦力人材の積極採用とキータレントの多様性拡大
  • 三井化学の取り組み事例①|「新しい働き方」を支援する人事施策
  • 三井化学の取り組み事例②|「エンゲージメント調査」と改善計画実行
  • 三井化学の取り組み事例③|メンター制度やグループ統合型人材プラットフォームの導入
  • 人事部は経営の視点を持ち、リーダーシップを発揮せよ