本連載では、丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスの大躍進を支えた組織開発のプロ・鳶本真章氏が、「ミッション」によって社員の能力を最大限に引き出し、組織を変革し、成長に導く「ミッションドリブン」な組織づくりの秘訣を具体的に解説する。第3回は、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」をステートメントとして掲げるファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、どのようなミッションを作り、同社を世界一のアパレル企業へと成長させたのかをひも解く。
(*)当連載は『ミッションドリブン・マネジメント~「なんのため?」から人を活かす~』(鳶本 真章著/技術評論社)から一部を抜粋・再編集したものです。
<連載ラインアップ>
■第1回 丸亀製麺の大躍進を支えた組織開発のプロが指南、ミッション経営の神髄
■第2回 トリドールの躍進を支えたプロが解説、なぜ「ミッション」が機能しないのか?
■第3回 ファストリを世界一のアパレル企業に押し上げた「ミッション」を読み解く(本稿)
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もっと夢を語っていい
トリドールの創業社長である粟田貴也氏が、「グローバルカンパニーになる」というビジョンを持ち、「売上高1000億円から5000億円を目指す」という目標を掲げていた話はすでにしました。僕はこの話を聞いたとき、ワクワクしました。
「これはきっと面白いことになる」
そう思って入社を決めました。生活に必須である「衣食住」のうち、「食」の分野についてはまだ日本に「この会社で働きたい!」とあこがれるような会社が少ないと思っていたのも理由の1つです。
食は絶対に必要なものだし、お祝い事のあるときや会食などをはじめ、だれもが外食産業のお世話になります。ところが、利用者として「ここのレストランに行く」というと「いいね!」という反応が普通であるのに対し、働き手として「ここのレストランに行く」というと「大変そうだね」という反応が普通。「すごい! いいね!」とはなかなか言われない業界です。
また、世界にはマクドナルドやスターバックスのように、名だたる「食」の会社があります。日本には素晴らしい食文化がありますが、外食産業としてはまだまだな部分が多いのです。そこにトリドールはチャレンジしていくといいます。「ここで働きたい!」と思ってもらえるようなグローバルカンパニー ──その大きな目標にワクワクしたわけです。
僕たちには、「これを成し遂げたらすごい」と思うような、大きなミッションの当事者になりたい気持ちがあるのではないでしょうか。現実的な事業プランも大切ですが、その前にもっともっと夢を語っていいのだと思います。
しかし、さまざまな経営者にお会いする中でも、大きな夢を語ってくれる人はなかなかいません。トップの人があまり夢を語らないと、下の立場の人たちも夢を持たなくなります。僕は採用面接に同席することが多いのですが、採用担当者が「最近の子は全然夢を語らないし、これをやりたいというのがなくて困る」とこぼしていました。「そういうあなたは何をやりたいのですか?」と聞くと「いや、別にないけど」。笑い話のようですが、本当です。