「パーパス」(企業の志や社会的存在意義)を重視した経営にいち早く取り組んできたユニリーバ・ジャパン。同社のパーパス経営の特徴は「企業のみならずブランドや個人にもパーパスを定めている点」だ。それはなぜか。ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス人事総務本部長のバスマジェ詩織氏に聞いた。
社会での存在意義はブランドや社員個人にも必要
──ユニリーバでは企業だけでなくブランドや個人にもパーパスを設定しているとのことですが、どのようなことを設定しているのでしょうか。
バスマジェ詩織氏(以下敬称略) ユニリーバの企業としてのパーパスは「サステナビリティを暮らしの『あたりまえ』に」です。パーパスは、社会における自らの存在意義に当たります。企業として軸となる考え方を持っていれば、変化の激しい世の中でも目的実現のために迷わずに進むことができます。
ユニリーバでは、この存在意義はブランドや社員個人にもそれぞれ必要だと考えています。ブランドなら市場で多くの人々に支持されるためにどんな役割を持つのか、個人では自分が人生において大切に考えるものは何かを言語化したものがパーパスに当たります。
──ブランドのパーパスはどのように決めるのでしょうか。
バスマジェ ブランドのパーパスは、なぜそのブランドが市場で必要なのかを指し示すものになります。最初からパーパスを持って生まれるブランドと、製品機能や商品購買ターゲット層からパーパスを生み出すブランドの2つがあります。後者では、商品購買ターゲット層がどのような社会課題を抱えているかを分析して、パーパスを決定しています。
例えば「LUX」が掲げる「BRAVE VISION 2030」は、日本の社会事情から設定されたものです。LUXはもともと英国発祥のせっけんブランドで、ヘアケアラインは1988年に日本で生まれました。それから30年以上経った今も日本には「社会人らしい髪」「母親らしい髪」といった偏見があり、2人に1人が好きな髪型や髪色を諦めています。そこから、誰もが自分らしい美しさを楽しみ、勇気を持って一歩踏み出せる社会を目指すパーパスが生まれました。