DX企画・推進人材が身に付けるべき「顧客価値提供力」はどうすれば養成できるのか?  DXやデジタルビジネスの成功事例には「顧客価値を高めるビジネスの仕掛け」がうまく使われている。本連載では、顧客価値を高める9の方法をテーマに、ビジネスアイデアを発想できる考え方、事例などを解説する。

 顧客価値を高める9の方法は以下の通り。

 今回も「8. 楽しい、珍しい、はやっている」について紹介をする。
これら3つは「価値=ベネフィット÷コスト」の式に従うと、どれも「感情ベネフィット」を大きく上げる手段となる。前回、取り上げた「楽しい」に続き、今回は2つ目の手段である「珍しい」について説明をしていく。

「珍しい」には多くのメリットがある

 「珍しい」という顧客価値は、お客の好奇心を刺激する。そのため、競合の商品やサービスと差別化を図れ、お客に新鮮さや話題性を提供し、購買意欲を高めることができる。

 このほかにも「珍しい」には多くのメリットがある。珍しい商品やサービスは口コミ効果で広く認知されやすく、ブランド価値を高めることに貢献する。珍しい商品やサービスはお客に限定感や希少性を感じさせることで、高い満足感を与える。この満足感はお客のリピート購入やリピート利用につながり、事業者の売り上げや利益向上に寄与する。

 例えば、あなたは「最近仕事が忙しく、新しいことが何もできていない」とする。週末には久しぶりに休暇がとれるが、何をしたらよいか迷っている。食べることが好きだが、近所の店は飽きてしまって物足りない。自分で作ってもよいが、一人暮らしなので、その気にもなれない。

 ある日、SNSをチェックしていると、知り合いが書いた記事で盛り上がっている。見ると「地元の伝統野菜を使った料理教室、参加者募集」と書いてある。「地元の農家と連携。忘れかけられた伝統野菜で料理を作って楽しむ」とある。あなたは急いで写真や動画、参加者コメントを読む。

「こんな野菜、見たこともない」「伝統野菜っておいしいの・・・」「こんなに簡単なら、家で作れるかも」。あなたは、まだ食べていない「珍しい食の体験」にワクワクし、急いで申し込みサイトに移動し、必要情報を入力する・・・、これが消費者から見た「珍しい」の事例である。

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「限定商品や限定サービス」というビジネスの仕掛けを学ぶ

 この「珍しい」を実現するには「限定商品や限定サービス」が特に有効である。

 その希少性が消費者の関心を引き、付加価値を生み出すからで、数量や期間が限られ、手に入れる機会が少ないと、お客は独占感や特別感を感じてくれる。その結果、購買意欲が高まり、話題性が生まれ、ブランドイメージの向上やファンを喜ばせる役割も果たす。さらに、その収益性は通常商品に比べて高く、短期間で大きな利益を上げることが可能になる。

 この事例を紹介しよう。

・差別化できなくなったコーヒーショップ

 ある国にゆったりとしたソファーでコーヒーを飲めるコーヒーショップチェーンがあった。

 最初は他にない落ち着いた雰囲気が話題になり、提供する商品の価格帯が高いにもかかわらず、多くのお客が訪れた。

 しかし、これに目をつけた他の事業者が次々と参入したのでコーヒー1杯の値段が下がり、お客が他店に行くようになったことで、そのコーヒーショップチェーンの経営は苦しくなった。

 社長は、お客を戻そうといろいろ考えたが良いアイデアは浮かばず、困った挙げ句、従業員にアイデアを考えてもらうことにした。指名した従業員は2人。1人は財務担当のAさん、もう1人はアルバイトの高校生Bさんだった。