SOMPOホールディングス株式会社 グループCHRO執行役常務人事部長 原 伸一
1988年4月 安田火災海上保険(現損害保険ジャパン)入社。2014年6月 安田企業投資株式会社 代表取締役専務。2015年4月 当社海外経営管理部長(兼)損害保険ジャパン日本興亜株式会社海外経営管理部長。2017年4月 当社海外事業企画部長。2017年8月 当社執行役員海外事業企画部長。2019年6月 当社グループCHRO執行役常務人事部長(現職)

 新中期経営計画(2021年~23年度)の3つの基本戦略の一つに「働き方改革」を挙げるSOMPOホールディングス。働き方改革でグループの持続的な成長に向けて、「社員一人ひとりのやりがいや幸福度の向上」と「圧倒的に高い生産性」を実現させようとしているが、それはどのように進めるのか。原伸一グループCHROに、SOMPOホールディングスの働き方改革とご自身のミッションについて聞いた。

保険の枠を飛び出し、世の中を守るためには人が一番重要な経営資本

――新中期経営計画の3つの基本戦略の一つに「働き方改革」を挙げていますが、その背景について教えてください。

原伸一(以下、原) 人々を未来社会のリスクから守り、健康で笑顔あふれる社会を創り、多様性のある人材やつながりで未来社会を変える力を育む、というのがわれわれの存在意義であり、その実現のための原動力が「働き方改革」と考えていることにあります。今までは「保険」が切り口でしたが、世の中の皆さまが健康で幸せに暮らせることなら保険でなくてもいい。保険の枠から飛び出し、今まで取ってこなかったリスクや手段にも関与して、企業として大きくなる。大きくなれば、ますます世の中に貢献することができると考えます。

 基本戦略の1つ目の「規模と分散の追求」では、保険や介護など既存事業の収益性を高め、利益の安定化を図り、自律的な成長を追求する。2つ目の「新たな顧客価値の創造」ではグループが目指す「安心・安全・健康のテーマパーク」を具現化する原動力となるリアルデータプラットフォームの構築・ソリューション開発を行う。そして3つ目の「働き方改革」で、われわれが今持っているビジネスと資本と人材で、新しいビジネスモデルを、今いる人、これから新しく入ってくる人でどんどんつくっていく。

 そこで経営として、基本戦略に「人」を明記しました。人がこれから一番重要な経営資本になるということを、外にも内にも宣言したということで経営としての覚悟を示したということです。

――御社のグループでは多くの女性が働いていらっしゃいますが、「働き方改革」の重要度・切実性をどうとらえていますか。

 グループの従業員の6割が女性ですが、管理職は2割台前半というのは明らかにおかしいですよね。これが日本の社会の縮図で、私どもはサービスを開発したり提供したり、社会のお役に立とうとしているのに、それを意思決定している企業の人員構成が、いびつであるというのは変えていかなければいけないという問題意識を持っています。

 入社したときには圧倒的に優秀だった人たちを、ちゃんと育てず期待をかけずに来てしまったという長年の積み重ねが、今現れていると考えています。遅ればせながら、同じ実力を持った人は同じ仕事、同じ役割、同じ評価を可能にする。そのための「働き方改革」です。

――いつから、どのようなきっかけで、どのような取り組みから始めたのですか。

 2003年に大手の国内金融機関では初めて、損保ジャパンが女性活躍推進部署を設置しました。仕事と生活が両立できるようなあらゆる制度を導入したので、制度の充実度ではどこにも負けません。2013年にはグループ横断でのD&Iでの推進体制を構築し、いろいろな取り組みをしてきましたが、十分に魂を入れるところまではできていませんでした。制度を整えても効果が出ないということは、ソフトが変わらないからでしょう。

 ところが、コロナをきっかけに大きく変わったのです。改革を一番阻んできたのは実は職場でした。職場にいることが仕事をしていることと認識され、さらにはその延長の夜の飲み会で意思決定をしていくオールドボーイズネットワークがあったのが、コロナはそれを自動的に崩してくれた。職場にいることではなく、仕事をすることが重要になってきたのですから、チャンスです。制度はかなり整っているので、あとは男性、女性の意識を変えていくための施策をどんどん打っていきます。