スタータアップの創業期に誰もがぶつかる壁がある。それは、起業をした後、一緒に働く仲間を見つけることができない、資金が足りない、などのリソース(資源)不足という壁だ。そのため、スタートアップは、他人を巻き込み、周囲のリソースを積極的に利用していかなければならない。ということで今回は『How To STARTUP』(久野孝稔著、あさ出版)の中から、スタートアップとして上手く周囲を巻き込む方法を見ていく。

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(*)本稿は『How To STARTUP』(久野孝稔著、あさ出版)から一部を抜粋・再編集したものです。

自分の夢を一方的に語るだけでは相手の関心は誘えない

 スタートアップに欠かせないのが、周囲を巻き込む力です。

「巻き込む力」は相手から自分への協力を引き出す能力のこと。これは周囲のサポートを獲得し、スケールの大きな仕事を成功させるのに必須のスキルと言えます。人を感動させ、巻き込んでいくにはストーリーテリングという方法が有効だと言われますが、ストーリーになっていれば必ず相手が感動し、応援してくれるということでもありません。ストーリーで語るというのは人を感動させるための必要条件であっても十分条件ではないのです。

 では、相手の関心を自分の夢に向けるにはどうすればよいでしょうか。それは、あなたが相手の関心のあることについて情報を入手して理解し、それをあなたの夢に関連づけて話すのです。そうしてあなたのストーリーに周囲を巻き込んでいきます。

 私は、湘南ヘルスイノベーションパークというライフサイエンス企業の集積する場に100社以上の企業を誘致しました。その時にやっていた手法がまさにこれです。

 実現したい夢は、武田薬品工業としての夢は国内屈指のイノベーションエコシステムを創造したいというものでした。しかし、これを誘致したい企業の経営者にストレートにお話ししてもそれぞれの企業の事情というものがあります。話はわかってもらっても、すぐに理解してもらい巻き込めるというものでもありません。

 そこで私は、誘致したい企業の現在の事業戦略や求めていることをホームページやニュースリリースなどで情報をチェックしたり、実際に経営陣にヒアリングをしたりしてあらゆる情報を入手し、相手の事情に応じた提案をしました。そうすることで、湘南ヘルスイノベーションパークでなら企業の垣根を越えてイノベーションを生み出せそうだと感じてもらうことができ、入居者やメンバーになってくれるという決断を導くことにつながったのです。

 くり返しますが、相手をストーリーに巻き込むには、相手はそもそも何を求めているのかを考え、自分自身の夢を相手の求めているニーズにリンクさせて話すことが必要です。そうすることで、相手はあなたの夢にますます関心を寄せ、どんどん巻き込まれていくことでしょう。