DX推進者3人のデジタルへの思い

 苦労があってもDX浸透をがんばるという3人の担当者にデジタルに期待することを聞いた。

 大木氏はデジタルの可能性を語った。「中学のころ、インターネットに触れてみて、世界中の人とコミュニケーションが取れることに驚きました。今はスマートフォンがあれば、相当のことができる。人の手を超えて、大きなことを成すには、今ならデジタルを活用すべきと思っています」

 明石氏は「今までデジタルに積極的ではなかった」そうだが、身近なデジタル体験が大事と言う。「自分でローコードやノーコードツールに触れるようにしており、最近では、チャットボットを作ってみたら、詳しくなくとも意外に作れると実感。こうした『できる』という体験はデジタルへの気付きにつながります。みんなにも触れる機会を増やしていきたいと、今、思っています」

 勝見氏は過去の自分の成功体験を会社のDX推進につなげたいと述べた。「昔、3交代勤務で水力発電の運転を行っていたとき、制御システムの使いづらい部分をエクセルのマクロで改良したことがありました。同僚から『これはいいね、これで楽になれる』と声をかけてもらいました。ちょっとしたことですが、こうした成功体験はありがたいものです。今はもっと便利で楽になれる施策を、長きに渡って使えるように提供したいですね」

 そして、明石氏と勝見氏からは「身近で小さなことでいいから、できるといった感覚や、楽になった、うまくいったという体験の積み上げがDXにおいては大切なのでは」という声ももらった。このメッセージは、東京電力グループのような大きな企業のDX担当にヒントになるものと思われる。

 DXの達成は「小さなことから」というメッセージを、グループ総員数約3万8000人、年間売上約5兆3000億円の企業から聞くとドンと腹落ちする人も多いのでないだろうか。DXの成功に奇策なしということなのだ。

東京電力グループの本社看板。TEPCOはTokyo Electric Power Company の略