東京電力リニューアブルパワーのDX:再エネ発電をスピーディーに展開
ますます重要になる再生可能エネルギー。その発電事業を担う東京電力リニューアブルパワーはDX推進に際して、人によってDXの理解は異なると考え、独自にDXの定義を「データとデジタル技術を活用して、既存業務やビジネスモデルを変革する、同時にそのために必要な意識や組織等を変えて競争上の優位を確立」と設定した。
社内向けにDXを定義することは意外に大事なことだ。企業によっては経済産業省のDX定義を(ほぼ)そのまま採用しているところもあるが、似たような表現になるとしても自らが「本当にそうか」と考えることはDX達成の大切な一歩。要するに「自分ごとにできる」かどうかということだ。
DXの定義をした上で、現在、東京電力リニューアブルパワーは「デジタルシフトの真っ最中」と勝見氏は言う。具体的には、RPA、AI、ドローンといった世間一般で使っている道具を、どんどん取り込んで改革を目指している。
同社は水力発電も担当しているが、従来のアナログだった油圧の測定値などをデジタル化しデータとして統合しやすい形に変えた。そのことでデジタルによるデータ処理が可能になり、AI活用による降雨量予測や河川流量予測など、最適な水力発電を行える仕組みを目指せるようになった。また、データによる予測は治水や防災にも活用できる。同社は、防災ビジネスに新たな立場で関与できると、デジタルによる価値創造の可能性に期待している。

2000年、東京電力群馬支店に入社し、水力発電設備の運転・保守業務に従事。その後、水力発電所の監視・制御システムの開発や東京電力リニューアブルパワーのDX戦略の策定に携わったのち、組織新設に合わせて2022年より現職。同社のIT・OTシステムの企画、開発を担当。趣味は映画観賞、プログラミング等。
ちなみにアナログだった測定値のデジタル化は、アナログ測定器はそのままに、その針の位置を画像で取得し、画像から測定値を判別する。「カメラなどが安価に買えるようになりましたので、自分たちでパーツを組み合わせてデジタルでのデータ取得に取り組んでいます」と勝見氏は、工夫込みでのDXを紹介してくれた。
デジタル活用をどんどん投入している東京リニューアブルパワーだが、具体的なDX目標も掲げており、その1つは「スマート発電所の実現」だ。デジタル技術による発電所運転の完全自動化、ドローン等の活用による現場出向レス、運用や保守の高度化などで達成を目指している。
2つ目の目標の「全ての書類や図面のデジタルデータ化」は、達成できればいつでもどこでもデータを利用できるので、働き方の自由度もアップできる。3つ目は、こうしたデータを経営に生かせるように配置し、データドリブンな経営を可能にすること。これら3つの目標を、東京電力リニューアブルパワーは 25年までに達成したいとしている。
こうしたアグレッシブな目標達成には、同社が有する13カ所の事業所の、約800人の従業員によるDXへの協力が必須だが、勝見氏は「できるだけ早く、事業所の方々がDXによって業務が楽になったと実感できるようにしたい。そうした効果があれば、積極的に関与していただけると思っています」と、25年の達成に向けた意気込みを語ってくれた。
