都市ガス事業者は、天然ガスとCCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)の供給を組み合わせ、脱炭素を目指す。写真は中国のCCUS施設写真提供:新華社/共同通信イメージズ
日本ガス協会は2025年6月、都市ガス業界の長期方針「ガスビジョン2050」を発表した。ロシアのウクライナ侵攻や電力需要増、脱炭素技術の進展など環境の変化を受け、従来の構想を全面的に刷新。e-メタンの推進に加え、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)導入など、新たな視点が多く盛り込まれた。
特に注目したいのは、地方の都市ガス事業者の活躍の重要性が明記され、実際に意欲的な取り組みが地方から起こっていることだ。「ガスビジョン2050」の狙いと背景は何か。都市ガス事業者はどう変わっていくのか。ガスエネルギー新聞常務取締役編集長の大坪信剛氏に聞いた。
変化するエネルギー環境と「ガスビジョン2050」策定の経緯
──日本ガス協会は2025年6月、「ガスビジョン2050」を発表しました。どのような狙いで作られたのでしょうか。
【ガスエネルギー新聞】都市ガス会社の今を報道する業界唯一の新聞。天然ガス、LNG、燃料電池などガス業界の技術や製品情報、企業ニュースの他、周辺業界や行政の動きなども幅広く報道する。2023年7月から新メディア「ガスエネWeb」を公開中。
大坪信剛氏(以下、敬称略) 2050年に向けて、都市ガス業界の未来像を示した長期ビジョンです。併せて、2030年に向けた具体的な行動計画として「アクションプラン2030」も策定しました。
日本ガス協会は2020年11月にも長期ビジョンとして「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を公表しています。これは、当時の菅義偉政権が「2050年カーボンニュートラル実現」を宣言した翌月にいち早く策定したもので、その影響を反映していました。
しかしその後、ガスエネルギーを取り巻く環境が変化したため、「ガスビジョン2050」は「カーボンニュートラルチャレンジ2050」のリニューアル版ではなく、一から作り直しています。
──具体的にどんな環境変化があったのでしょうか。
大坪 まずロシアのウクライナ侵攻以降、天然ガスの供給が不安定になり、ガス調達安定化の手段としてLNG(液化天然ガス)の意義が改めて見直されるようになりました。加えて、AIの急速な普及などを背景に電力需要が拡大したことから、化石燃料の中で相対的にCO2の排出が少ない天然ガスを燃料とした火力発電への期待が高まっています。






