
日本の都市ガス事業者の海外展開のニュースがにわかに注目を集めている。国内市場の成長余地が限られる中、一部の都市ガス事業者がインドや北米、東南アジアでの事業展開に活路を見いだしている。特にインドでは、家庭用や交通インフラを視野に入れた大型プロジェクトが始動。さらにトランプ外交との関係から、アラスカ産天然ガス開発への日本の参画も交渉カードとして注目されている。
一方で、カーボンニュートラルの実現という長期課題に向けては、e-メタンなどの次世代燃料をいかに普及させるかが問われる。都市ガス事業の国際展開の最新事情と、カーボンニュートラル実現に向けた業界の取り組みなどについて、ガスエネルギー新聞常務取締役編集長の大坪信剛氏に話を聞いた。
インド、タイ、ベトナム…都市ガス事業者が海外を目指す狙いは?
──日本の都市ガス事業者の間で、海外進出の動きが広がっているそうですね。

都市ガス会社の今を報道する業界唯一の新聞。天然ガス、LNG、燃料電池などガス業界の技術や製品情報、企業ニュースの他、周辺業界や行政の動きなども幅広く報道する。2023年7月から新メディア「ガスエネWeb」を公開中。
大坪信剛氏(以下、敬称略) 活発な動きを見せているのは大阪ガスです。同社は2021年11月に日本企業として初めて、インドでの都市ガス事業をスタートさせました。具体的にはシンガポールに本社を置く企業に出資し、その出資先企業のグループ会社がインド南部を中心に12の事業エリアで展開する都市ガス事業に参画するという形です。
インドでは天然ガス自動車が普及しているので、ガスステーションの整備が進んでおり、こうした交通向けのガスインフラの他、家庭用・業務用のガス販売も拡大していくことを計画しているようです。
大阪ガスは、インドでの都市ガス事業を海外展開の柱に位置付けています。現在、同社は日本で約66億万立方メートルの都市ガスを販売していますが、2030年にはその半分以上に相当する約37億立方メートルをインドで販売すると言っていますから、なかなか壮大な計画です。