ごみ焼却施設として、世界で初めてCO2回収装置を併設して注目を集める佐賀市清掃工場(写真提供:ガスエネルギー新聞)
カーボンニュートラル達成に向けて、日本の都市ガス業界でもCCU(CO2の回収・利用)事業が注目されている。そんな中、回収したCO2を商業利用するという意欲的な取り組みが佐賀市でスタートし、世界的な関心を集めている。植物の光合成を促すというCO2の特徴を活用して、野菜工場での生育促進などに役立てるという試みだ。これは都市ガス事業者の脱炭素事業にもつながる可能性があるという。
プロジェクトの概要や都市ガス事業者との関係性などについて、ガスエネルギー新聞常務取締役編集長の大坪信剛氏に聞いた。
世界初、清掃工場から回収したCO2を商業利用
──カーボンニュートラル達成に向けて、CCU(CO2の回収・利用)事業が世界的に注目を集めていますが、日本国内でも先進的な取り組みが始まっているそうですね。
【ガスエネルギー新聞】都市ガス会社の今を報道する業界唯一の新聞。天然ガス、LNG、燃料電池などガス業界の技術や製品情報、企業ニュースの他、周辺業界や行政の動きなども幅広く報道する。2023年7月から新メディア「ガスエネWeb」を公開中。
大坪信剛氏(以下、敬称略) 佐賀市清掃工場がCO2回収装置を併設し、回収したCO2を商業利用する、という世界で初めての取り組みを進めています。このプロジェクトには地元の佐賀ガスも導管の技術供与をしており、脱炭素に向けた都市ガス業界の事業としても大きな可能性を秘めています。
──具体的にどんなプロジェクトなのでしょうか。
大坪 CO2は地球温暖化の原因とされる一方で、植物の光合成に必要不可欠な気体でもあります。そこで佐賀市清掃工場では、ゴミ焼却で出た排ガスの中からCO2だけを分離回収し、それを周辺の農園などに供給して、野菜の生育促進などに役立てているのです。
2016年にスタートしましたが、キュウリやイチゴを栽培する植物工場、抗酸化作用を持つ物質を生成する藻類の培養工場など、プロジェクトに参加してCO2の需要家となる企業は着実に増えています。
最近では2024年に花王が、ローズマリーなどを育てる植物工場を稼働させました。清掃工場で分離・回収したCO2を吹きかけて育成を促進し、エキスを抽出して、化粧品の保湿成分などに使うのだそうです。
一般には「嫌悪施設」と捉えられがちな清掃工場ですが、ここではCO2の商業利用を起点にして、非常にユニークな経済圏を形成しています。






