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 多角化した経営は評価されにくく、誤解されやすい──だが本当に、コングロマリットは企業価値を損ねるだけなのか? むしろその戦略にこそ、日本経済が沈まないためのヒントがあるのではないか。企業再生の専門家が著した『経営者のための正しい多角化論』(松岡真宏著/日本経済新聞出版)より内容の一部を抜粋・再編集。

 国鉄を起源に持つJR東日本はいかにして、鉄道会社の枠を超えた総合企業へと脱皮したのか。競争優位性を支えているものとは?

JR東日本――運輸企業から総合消費企業へ

経営者のための正しい多角化論』(日本経済新聞出版)

■ NEWoManの躍進

 JR東日本の新たな取り組みは、高輪ゲートウェイ駅のNEWoMan(ニュウマン)である。

 ニュウマンは、ルミネが2016年に新宿駅新南口で初めて展開した新ブランドの駅ビル型ショッピングセンターである。この新業態は、従来のルミネよりも若干年齢層が高く、上質志向の30~40代の大人の女性をメインターゲットとしている。

 ファッションだけでなく、飲食、クリニック、保育園、イベントスペースなど多様な都市型ライフスタイルの提案で新たな需要開拓を目指している。「大人版ルミネ」とも言えよう。

 新宿駅は日本最大の乗降客数を誇る駅であり、ニュウマンが立地する新宿駅南口は最高の立地の1つと言える。

 バスタ新宿との連携や昼夜を問わず利用できる24時間営業のフードホールなど、都市の多様な人流とニーズに応える施設設計が特徴だ。

 ニュウマンは、新宿での成功を受け、2020年には横浜駅直結のJR横浜タワー内に2店舗目となる「ニュウマン横浜」をオープンした。そして、2025年3月には、山手線新駅・高輪ゲートウェイ駅直結の「高輪ゲートウェイシティ」内に「ニュウマン高輪」を開業し、3店舗体制となった。