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多角化した経営は評価されにくく、誤解されやすい──だが本当に、コングロマリットは企業価値を損ねるだけなのか? むしろその戦略にこそ、日本経済が沈まないためのヒントがあるのではないか。企業再生の専門家が著した『経営者のための正しい多角化論』(松岡真宏著/日本経済新聞出版)より内容の一部を抜粋・再編集。
地方都市・松本で多角化を進めたアルピコグループ(旧・松本電鉄)は、なぜ「選択と集中」をやめ、再びコングロマリットを志向したのか。その判断が突きつける、日本経済の“ある現実”とは。
アルピコホールディングス(旧松本電鉄)――地域のコングロマリット企業
『経営者のための正しい多角化論』(日本経済新聞出版)
■ 選択と集中をしない再生計画
3つめに紹介する事例は、筆者が実際に取締役として携わった案件である。
それは、長野県松本市に本社を置く松本電気鉄道(現アルピコ)グループである。同社は、2008年に私的整理の手法で大幅に債務を圧縮し、その後収益性を改善して2024年12月東証スタンダード市場に上場を果たした。
同社の祖業は鉄道事業であるが、バスやタクシーなど交通事業での多角化によってグループとして成長を続けた。交通事業以外にも積極的に業容を拡大し、食品スーパー、ホテル・旅館運営など、いわゆる多角化戦略で松本市を中心にコングロマリットを形成していた。
筆者が初めに同社を訪問したのは、2007年夏。
既に外資系コンサルティング会社の日本法人が同社と契約済みであり、経営のアドバイスを行っていた。アドバイスの内容は、食品スーパーなど祖業以外を同業他社に売却して、交通事業に特化すべきだ、というわけだ。






