『一人ひとりが、より「よく生きる」ためのDX。』をDX推進コンセプトとして、教育事業を中心に幅広い事業領域を手掛けるベネッセグループ。2020年より、全社一丸となってDXに本格的に取り組み始めた。
DX戦略のテーマは2つ。1点目は「事業フェイズに合わせたDX推進」だ。事業内容によって求められるDXやDXの進度は異なる。そのため、DX戦略の立案・推進を担うDigital Innovation Partners(以下、DIP)のデジタル人財を各事業に派遣し、現場に最適なDXを推進する。
ベネッセホールディングス専務執行役員・ベネッセコーポレーション取締役の橋本英知氏は、CDXO(Chief DX Officer)とDIP本部長も兼務する。「DXは『現在のビジネスモデル変革』と捉えている。良いサービスをお客さまに届けるために、全事業でデジタルを使ってやれることはたくさんある。環境がどんどん変化する中で、顧客のニーズに沿うことが重要だ」とDXの重要性を語る。
社内のDX推進状況は3つのフェイズに分けて考える。サービスや業務プロセスを段階的にデジタル化し、品質・生産性向上を行う「デジタルシフト」。オフライン・オンラインを問わず、お客さま本位でのサービスを提供する「インテグレーション」。そして、ビジネスや収益モデルの転換を見据えて新モデルを開発する「ディスラプション」だ。
全ての事業はいずれかのフェイズに該当し、それぞれの事業内容や状況に合わせて最適な活動を進める。例えば、通信教育事業で解答用紙の添削・指導を行う赤ペン先生では、郵送での返信に約10日要していたところを、デジタル添削で3日以内にまで短縮させた。お客さまはスムーズに学習が進められるメリット、ベネッセは郵送コスト削減と、返信にイラストや解答式などのデータを利活用できることで、より一人一人に向けたコメントを書く時間に集中できる利点が生まれた。
DX戦略の2点目のテーマは「組織のDX能力向上」だ。グループ全体のセキュリティーやインフラなどのシステム基盤を整え、組織改革や人財育成をグループ全体で行う。岡山のデータセンターではオンプレミス環境からクラウドへの移行を進める。社内で自社開発されるDX投資案件は、数十億円の大規模なものから1000万円以下のものまで幅広く、年間500本を超える。
システムの内製化も進めるが、「中で作れば作るほど、外の力も借りる必要性があると感じる」(橋本氏)ことから、案件ごとにベンダーを選定してベネッセ側がプロジェクトマネジメントの指揮を執るスタイルが主流だ。自社や各ベンダーの強みや特徴を理解した状況で発注することで、自社に最適なシステム基盤を構築する。