2022年リニューアルした「Smash」トップページ

 スープストックトーキョー(以下、スープストック)には、社員同士をつなぐネットワークがある。「Smash」は、2010年より始まった社内報がベースとなった社内交流サイトだ。タイトルは、当時の運営会社スマイルズの「スマ」と、現場を盛り上げる掛け声の意味合いで名付けられた。

 社内報としてスタートした当時は、営業部の有志メンバーが全8ページの紙媒体で毎月発行していた。当時のキャッチコピーには「SmilesのSmilesによるSmilesのための月刊誌。これを読めばもっともっとSmilesで働くことが楽しくなって、もっともっとSmilesが好きになる。」と書かれている。各店舗で働くスタッフ紹介やお客さまからのお褒めの言葉を掲載するなど、社内報の役割を果たしていた。

 2015年より紙媒体からウェブへと移行し、コンテンツをより強化するべく編集部体制に変更した。2016年にスマイルズとスープストックが分社化したことを契機に、2017年スープストックのオリジナルサイトとして独立させたのち、2022年1月にリニューアルしたばかりだ。

社内報から、働く人の内面を知るサイトへと進化

SmashのB面コンテンツでは、仕事では見えてこない個人の趣味やプライベートな部分を公開する
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 形態や制作体制は変わったが、発行当初から働く人にスポットを当てる姿勢は変わらない。「日めくりカレンダー」というコーナーでは、各店舗で働くパートナー(アルバイト)を掲載することで、同店舗で働くスタッフがサイトにアクセスするきっかけを作った。また、パートナーのグレードが上がる(昇級)際には「〇〇を頑張る」とSmashへ投稿することを条件の一つに組み込んだ。全社員、全パートナーに見られる場所で宣言させるのは、発言を躊躇する人にも、気軽に利用してもらうために始めた仕組みだ。

 しかし、リニューアル前のSmashは業務のお知らせが多く、情報閲覧が中心の「お仕事サイト」になっていた。オリジナルサイトになってからはトピックや記事に対しての反応(書き込み)はできたものの、みんなの声を聞く設計ではなかった。

「スープストックは発信したい人が多いので、ともすると業務の情報ばかり並んでしまうんです。でもSmashを見なければ仕事ができない状態は良くないですし、読む時間も仕事なのか?と疑問が出てきて・・・。今回のリニューアルでは仕事の細かいルールを知らせるのはやめて、本業や仕事に必要なA面ばかりでなく、働いている仲間の仕事上では見えない個人やプライベートのB面を出してもらう場にしたいです」と副社長の江澤身和さんは意気込みを語る。

副社長の江澤身和さん

 現在のSmashのタイムラインには「うれしかったこと」「自分の好きなアイドルの話題」など、自由に投稿できるお題が並ぶ。好きなものが同じ人同士ですぐにつながりを持てる時代にあえてSmashをそういった位置付けにしたのには、業務と関係ない話題でコミュニティを築ける場所を作るためだ。

 以前より江澤さんは、スープストックをアルバイト先に選ぶ理由はお金を稼ぐためだけでなく、バイト先で新しい仲間を作る、社会に出た後も生かせる経験を身に付けたいなど、お金以外の価値を求めて働くことが多いと感じていた。同じ職場を選ぶ人は似たような雰囲気のことも多く、好きなものや価値観が似ている傾向にある。せっかく出会った縁を深めることは、会社や人へ興味を持ってもらうことにもつながると考えた。