カシオがユーザーにどんどんアプローチしている。2021年7月には、G-SHOCK STOREの店舗スタッフがインターネット経由でG-SHOCKのコーディネート提案を行うサービスを開始したり、2021年10月にはG-SHOCKをカスタマイズしてオーダーできるWebサイト「MY G-SHOCK」を公開するなど、その動きに目が離せない。「JDIR」では2021年7月に同社のDX戦略について紹介しているが、今回は1年たって、その成果やそもそも目指していたところなど、今だから語れる話を聞いてみた。すると、こうしたサービスは、同社DXが生み出した最初の果実ということが分かった。
DXに向かうきっかけはコロナ禍、これで根底の問題が露呈した
「JDIR」では2021年7月に同社 デジタル統轄部長 石附洋徳氏に、カシオのDX戦略についてその具体的内容を聞いた。
当時、石附氏は「ブランドに対するロイヤルティを高めてファンになっていただくのがさらに難しい時代になってきた」と語り、カシオのスタンスを「製品重視型」から「ユーザー価値重視型」へと大きく舵を切って「ユーザーとつながる」「ユーザーを知る」の2軸でDXを推進。具体的には、つながるために「User Communication Platform」を、知るために「User Data Platform」というファンクションを社内に構築し、ユーザーデータを積極的に収集して数値を基にしたカシオのユーザー像の明確な把握に努めた。
これらの施策によって、既に当時から「嗜好性・HOT度・ロイヤルティが分かり、個別のユーザーに対して最適なアプローチの姿が見えてきました。それがOne to Oneマーケティングを可能にしています」と成果を語った。
DXで目指したいこと(ユーザー価値重視型にシフト)を設定し、その方法を定め、構築し、その最初の成果が出た1年だった。その1年が過ぎ、新たな施策に取り組むカシオに、今一度、「なぜDXを必要と思ったか?」を問うてみた。
ユーザー価値重視が大切と思ったかきっかけは何だったのか。すると、石附氏はコロナ禍は明らかにきっかけの1つだったと言う。しかし、コロナ禍が直接の要因ではなく、その下にある根源的な理由がコロナ禍によって顕在化したと述べた。
カシオとカシオのユーザーとの関係の再構築を目指す
「コロナ禍をきっかけに、カシオと私たちのユーザーとの関係を再構築しなくてはいけないと痛切に感じたのです。カシオの経営層も、マーケティングというよりも事業そのものを見直さなきゃいけないと、危機意識を明確にしたのです」と石附氏は当時を振り返る。