コニカミノルタ株式会社の常務執行役であり、DX改革、DXブランドコミュニケーション、渉外を担当する市村雄二氏。
大手グローバルIT企業にて国内外の営業・企画・事業開発・ベンチャー投資に携わった後、2012年にコニカミノルタに入社しM&A やトランスフォーメーションを進めITサービス事業強化や全社の事業開発を担当する。2015年に執行役、2018年には常務執行役に就任。現在は、デジタル技術とデータを活用し、コニカミノルタグループ内の業務プロセス変革・オペレーション効率化・働き方変革などの「DX改革」推進をグローバルに統括、マネジメントしている。「イノベーション志向経営」に関する外部講演多数。

 自らのDX推進を加速するとともに、取り組みにより得られた知見をサービスに生かしているコニカミノルタ。同社は経済産業省による「DX銘柄2020」にも選定されているが、それはIntelligent Connected Workplace構想における中小企業へのDX支援サービスや、独自の画像IoT技術による介護業務革新の試み等のビジネスモデルの転換による将来性が高く評価されたためだ。コニカミノルタのDXの取り組みについて、常務執行役であり、DX改革を担当する市村雄二氏に聞いた。

DXを推進する「3つの軸」と「8項目のオーケストレーション」

――コニカミノルタがDXに取り組んだきっかけを教えてください。

市村 コニカミノルタでは3年ごとの中期計画を回しています。しかし、過去2回、6年間の中期計画を振り返ると、部署個別での変革は進んでいるものの、グループ全体での変革は予定通りに進んでいるとは言えませんでした。そこで振り返りと総括を行い、2020年度からの中期計画を「DX2022」と名付け、社長がリーダーシップをとって変革を推進するとともに、DX担当役員を初めて設置して取り組んでいます。

 ただし、DXのような言葉は全社戦略をベースにトップダウンで推進しようとすると、部門ごとの事情から異なる解釈をされてしまいがちです。例えば、部門が相手にしているのが成長市場か成熟市場かによって、取り組むテーマも優先度も異なります。そのため、部門単位での進展はあっても、それが本当に全体戦略の中で生かしきれているのかとか言うと、物足りなさを感じました。ボトムアップとトップダウンの双方向のアプローチが必要だったわけです。

――コニカミノルタグループがDXの推進に設定している「3つの軸」と「8項目のオーケストレーション」があると聞いています。これについて教えてください。

市村 最初にコニカミノルタグループの「DXビジョン」を策定したわけですが、デジタイゼーション(デジタル化)ではなくデジタライゼーション(デジタル変革)であると定義し、コニカミノルタでは「デジタルビジネス変革」という言い方をしています。デジタルテクノロジー、およびデジタルビジネスモデルを使い倒すということですね。

 また、「ビジョンに込めた想い」「実現したい未来」「大切にする考え方」を明らかにしています。そして、「グループ全体にインパクトを与えるような改善でないと価値がない」「デジタルによってプロセスや組織さえ変革してもいい」と言いきっていることは特徴的です。

 DXにおいては「変わらないこと」が最大のリスクですから、一過性の変革ではなく変化し続けることが重要です。さまざまな外部パートナーと組んでいくことも大切なポイントになります。特にSDGsやESGの世界では、一つの企業でできることは限られていますから、単なるパートナーシップではなく、より関係の深い仲間になっていくことが必要としています。

 3つの軸というのは、オペレーショナルなDXである「社内のDX」、価値ある顧客体験(CX)を提供する「事業のDX」、そしてコニカミノルタとしてのパーパスや長期ビジョン、コニカミノルタのDNA、そして価値創造プロセスを従業員一人一人が理解し、行動変容する部分で構成されます。これらがそろって、初めて新しい文化が生まれます。

DX推進の8項目指標と3つの枠組み
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 その中心に据えているのが「アンロック」という言葉で、個人や組織が従来の固定観念を打破して新しい動き方をしないといけないということです。この3つの軸を同時に進めていく。これを経営戦略、全社戦略の位置付けで行っています。

 社内DXにおける従業員体験向上の部分では、顧客体験、CXを向上させる事業DXと、従業員体験、EXを向上させる社内DXを両輪で回していきます。プロダクトやメーカーの観点では、サービス商材であっても物のように売ってしまいがちですが、立ち位置をメーカー側ではなくてお客さま側に置く、社会側に置くことが大事です。

 例を挙げると、日本国内で「いいじかん設計」という商標で、外部に提供しているサービスがあります。これは、「従業員の業務で自動化できるところを自動化して、できるだけ集中する時間、創造的な時間に使ってもらう」、あるいは「アウトプットが明確でないため評価できなかったことを評価していく」といったもので、社内でいろいろ組み合わせて使っていた仕組みを外部にも提供しています。

 もう一つの8項目のオーケストレーションですが、これはどれか一つの項目を満たせばいいというものではなく、全ての項目が事業領域ごとに細分化されてオーケストレーションされていくことが重要だと考え、定めたものです。項目の上の方は事業のDXで実現していくこと、下の方は社内のオペレーションの軸として横串を通し、組織設計、人事制度、あるいはインフラなどを整備していくことになります。

 会社全体の変革指標については、5段階にレベル分けをして、客観的な数値により指標化して、レビューできるようにしています。将来的には、グローバルエクセレントカンパニーのレベルで自律的に、自ら継続的に改善が回るレベル5を目指します。

――アンロックについて、教えてください。これを据えた背景にはどのようなことがあったのでしょうか?

市村 以前のコニカミノルタは機能組織でしたから、従業員は自分の部門のことを一所懸命考えて頑張っていました。しかし、一方で部門ごとにサイロ化してしまい、部門間での課題の共有などが行われていませんでした。例えば、顧客情報は営業部門のもので、会社全体で共有するものではないという考えもありました。そこで、もっと周囲を見回し、今やっている仕事や優先順位が本当に全社戦略に適合したものなのか、レビューしながら取り組もうというわけです。

 それを周知させるために社長や担当役員、部長クラスに動画で発信してもらったり、部門長と社長の対談を録画してリモートから見られるようにしたりするなど、言語化したさまざまな情報発信を繰り返しました。ただ、この手法では一方通行のコミュニケーションになってしまうので、ワークショップも展開しています。