(2) 本社の海外拠点戦略と現地リソース実態の整合
本社が立案する海外拠点戦略と現地拠点のリソースの整合性、また現地が描く「ありたい姿」との整合性がついて、初めて「実現」がある。
本社の認識する現地のリソース像は現実と合致しているのか、またアップデートされているのかを考える必要がある。単なる人数合わせではなく、実際にナショナルスタッフが果たせる役割を踏まえ、ギャップを埋める策を含めた本社海外拠点戦略(時には支援)と現地拠点での実行でありたい。
(3)国民文化・価値観の異なる多様な人材のベクトル合わせの土台としての人事制度
国民文化・価値観の異なる複数の人材から成り立つ組織では、社員のベクトルを合わせる土台として人事制度活用の有効性が高まる。
また、タイを含めたASEAN主要国では、日本とは異なった転職市場が確立されている。最近になってジョブ型が注目されている日本とは基本的に雇用環境が異なる。現地でジョブ・ディスクリプションが必須であることもそのためである。
日本本社の制度を現地で活用すること自体は問題ではないが、現地の実態が加味されないまま単に言語翻訳をした制度では、制度の意図が生きることはない。例えば、日本本社の等級要件をそのまま翻訳して用いて、要件と実態が著しく乖離するなど、定義自体の不適合や運用の形骸化が散見される。
その結果、明確なキャリアパスが提示できない、組織として体系的な人材育成がなされていない、そのため人材流出が止まらない、などが散見される。人材育成は現地法人の経営課題でもある。