コロナ危機による急激な環境変化で、職場の在り方は一変した。テレワークやリモートワークの推進・定着により、働く”職場”でこれまで見えてこなかった多くの課題が顕在化してきた。

 ”職場”とは、”職”、つまり仕事そのものと、その”職”を実行する”場”とが合わさった言葉である。人・組織の自律性を引き出す「職(仕事)」の在り方と、人・組織の能力を最大限に引き出す「場」の在り方について、コロナ渦において従来とのギャップを感じた人も多いだろう。

 ここでは、職(仕事)と場(空間)に携わる人がお互いに共感・協調をもって自律的に機能している状態を「職場力」がある状態として、コロナという直近の状況を踏まえながら、最近のコンサルティングの現場で感じている変化をご紹介しよう。

リモートワークで「職場力」の差が見えた

 筆者は20年ほど組織開発に関するコンサルティングを実施しているが、このところ「職場」が成立しにくくなった、という管理職層の声を聞くケースが多い。

 例えば、テレワークによるチームミーティングの場面では
「パソコン画面を通じたやりとりになり、コミュニケーションが取りにくくなった。定期的に進捗を確認しているが、どうも一方的になる」(製造業チームリーダー職)という声だ。

 また、さまざまな仕事を抱える職場では
「部署内には、保守・メンテナンス、設備を扱う現場仕事や客先常駐をしなくてはならないメンバーがいる。一方で管理など在宅仕事中心で業務が行えるメンバーもいる。実際の業務環境に人事制度が追い付いておらず、不公平感が残る中で、マネジャー職である自分だけテレワークはやりにくい」(システム開発業マネジャー職)という職場内における不公平さと自身の立場に悩んでいる人もいた。

「時間差勤務の奨励やFace to Faceの会合の自粛により直接職場のメンバーと顔を合わせる機会が減った。ミーティングも短時間のオンラインミーティングが中心となった。お互いのスケジュールは公開されているが積極的に見ようとは思わない。他の人のことはよくは分からない」(製造業担当職)など、職場の一体感の喪失を懸念している声もよく聞く。

(これらは、端的にいえば職場のチーム力そのものについての課題である。「テレワークだから」こその課題かどうかは疑わしい)

 一方で、従来からチーム力を養い、連帯感を強めてきた職場では、リモートワーク環境への変化に対しても柔軟かつ素早い対応がとられている。例えば、
「皆で議論するときのメリハリがついて、リアルなオフィスの会議室に集まるときとは違うダイナミックな議論がオンライン会議でできている」(サービス業マネージャー職)という声があるように、会議を行う場合に制約となっていた会議室予約・空き状況の問題や、メンバーのスケジュール調整に縛られないなど、リモートならではのメリットもうまく引き出してチームマネジメントをしているところもある。

 コロナ危機以前から、働き方改革の本格化やテクノロジーの急激な進化により、これからの時代の”職場”の在り方について議論は進んではいたが、コロナ禍において一気にリモートワークへの対応を迫られたことで、働く人とチームが効率的・効果的に機能する「職場」そのものの力の差が顕在化してきたといえるだろう。