ジョブ・クラフティングがもたらす成果

 ジョブ・クラフティングは個人の働きがいを高めること以外の側面においても成果があるといわれている。

 まずは、組織に対するプラスの効果である。

 従業員がジョブ・クラフティングを行い、自分に合っていないと感じる仕事にも自分なりに工夫を加えていくことによって、ミスマッチ感が減少していきワークエンゲージメントが高まっていく、という効果が調査結果から認められている。

 そうしてエンゲージメントが高まっていくと、個人のウェルビーイング(幸せ感)が高まっていき、積極的に仕事を行う従業員が増えることにつながる。ジョブ・クラフティングを実施することによって組織として成果が上がっていくことが期待されるのである。

 また、ジョブ・クラフティングは経験学習の促進にもつながる。

 経験学習とは、スキルは一度身に付けたら終わりではなく、継続して学習していき、新しいスキルや知識を得ていくことが重要であるということを示す。その研究の第一人者である北海道大学の松尾先生は、経験学習を進めていくためのカギとして、「ストレッチ」「リフレクション」「エンジョイメント」の3つを挙げている。

「ストレッチ」はちょっと背伸びしないとできないようなことにチャレンジしていくこと、「リフレクション」は自分のやったことを振り返ることである。

 この2つが重要であることは直感的に分かるが、背伸びして振り返って、という2つだけでは心が折れてしまうことがあるかもしれない。そこで、「エンジョイメント」というやりがいや面白さといった要素を仕事の中に発見することによって、経験学習の好循環が生まれていくと松尾先生は述べている。

 まさにその「エンジョイメント」を発見するということに、ジョブ・クラフティングは関わると考える。

 このように、ジョブ・クラフティングは、エンゲージメントを高めていくという側面と同時に、個人の経験学習の促進にプラスになることが明らかになっている。