ジョブ・クラフティングとは何か?

 ジョブ・クラフティングとは、働く人一人一人が主体的に仕事や職場の人間関係に変化を加えることを通じて、与えられた職務を素材に、自らの仕事の経験を創り上げていくことである。与えられた仕事をそのままやるのではなく、自分なりに何か変化を加えて、自分なりの手触り感がある仕事に変えていく、それこそがジョブ・クラフティングだ。

 例えて言うならば、「自分をひと匙入れる」ということだ。ライターの一田憲子氏の一節を引用すると、「仕事の中に『自分』をひと匙入れること……。その効き目はきっと計り知れないのだと思う。そして、もし『本当はあの仕事がやりたかったけれど、今はこの仕事しかできなくて』という状況でも、その”ひと匙”はきっと有効だ。イマイチ乗り気になれない仕事も、『なんだか面白くなってきた』、と味わいを変えるかもしれない。」
*一田憲子『「私らしく」働くこと―自分らしく生きる「仕事のカタチ」のつくり方』マイナビ出版(2015年) p.38より引用

 この「ひと匙入れる」というのをジョブ・クラフティングと捉える。

 ジョブ・クラフティングは学術的に3種類に分類される。
①業務自体のクラフティング:具体的な業務の内容や方法を変更したり、工夫を加えてみようとする
②相互作用のクラフティング:仕事の遂行に関連する他者(同僚、顧客、取引業者等)との関係性を増やしたり、関わり方を変えてみようとする
③仕事の捉え方のクラフティング:個々の業務や仕事全体の意味や目的の捉え方を変えてみようとする

 例えば、このような事例がある。

 株式会社JR東日本テクノハートTESSEIは、東京駅に到着した新幹線の車内清掃を行う会社である。「清掃はお客さまの旅のおもてなしのための仕事」だと清掃員の仕事の捉え方を変化させたことにより、働いている人が仕事を誇りに思えるようになり、人間関係や業務の改善につながった。

 このような仕事の捉え方をきっかけとした変化というものは、ジョブ・クラフティングの一つの例である。