また、国際見本市や会議のオーガナイザーであるメッセベルリン(Messe Berlin GmbH)が主催し、毎年秋にドイツ・ベルリンで開催されているコンシューマ向けエレクトロニクスのイベント「IFA」。昨年は同じく新型コロナの蔓延により対面式での開催を「招待制」かつ「規模を大幅に縮小した上で開催」し、イベントにアクセスできない来場希望者にはデジタルサイトをセットアップし公開した。
デジタルサイトについては無料で対応するなど英断もあったが、準備期間が短かったこともあり、サーバーのキャパシティや使い勝手(UX/UI)に問題があったことは残念だった。
(参考)「完全デジタル開催『CES 2021』の画期性と残念な点」(IFA 2020の紹介)
今年9月3日~9月7日の会期で行われる「IFA 2021」については、主催者がドイツ公衆衛生局と協力し来場者と出展者の安全を確保することを前提に、例年通りメッセベルリンの会場を使って対面式で行われる予定だという。
このように海外の大型イベントは、コロナ禍という懸念は抱えながら、明らかに対面でのリアル開催の流れに回帰しつつあるようだ。
それでは新型コロナウイルスから来場者や出展者を守るための安全対策は具体的にどのようなものか。これについては開催が2カ月後に迫っているMWC 2021のガイドラインが参考になる。具体的にはMWC 2021では地元カタルーニャ州政府や保健当局との協力のもと、マスク、消毒、ソーシャルディスタンスという感染予防の基本動作に加えて以下のような取り組みを行っていくという。
・リアルイベントの参加者には検査で陰性証明を義務付ける。
・物理的な参加証の代わりにスマートフォンのアプリを使うことで非接触にする。
・人と人との接触を減らすために会場の出入り口は例年の2倍以上にする。
・地域のレストランはソーシャルディスタンスを確保できるように整備する。
・ワクチン接種については感染防止効果のレベルが不明なので参加条件にしない。
当然のことながら、MWC 2021での安全対策の取り組みとその結果は約半年後に開催されるCES 2021にもフィードバックされ、さらに改善+洗練された形で導入されていくに違いない。
イノベーションはテクノロジーから生まれるのではなく、アイデアとアイデアの積み重ねやぶつかり合いから生まれていく。そのために「熱量」をともなった会社と会社、ヒトとヒトの出会いは重要な意味を持ち、こういった活動を実現するプラットフォームとしてCESのような国際的なテックイベントは極めて重要な役割を果たす。
欧米における対面式のリアルイベント復活の流れは、ワクチン接種が着実に進み感染拡大防止の効果が現れてきているというという単純な理由からだけでなく、イノベーションの本質についての深い理解と期待がその背景にあるように思えてならない。