世界中のアップルファンからアップルカーに対する期待や憶測は尽きない
(出所:YouTubeに投稿された映像「Apple Car More than a car」より)

(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役)

 今年2021年に入って早々、米アップルが電気自動車(以下「EV」)「アップルカー」を製造するにあたり複数の自動車メーカーと生産委託の交渉に入っている、との報道が世界を駆け巡り、様々な憶測を産んでいる。

 その発端は1月8日「現在自動車がアップルと自動運転EVの委託生産について検討している」と韓国メディアが一斉に報道したことだ。そして2月初旬に入ると、米CNBCが「アップルと現代自動車ならびに傘下の起亜自動車との協議が最終段階にあり、アップルカーは米ジョージア州ウェストポイントにある起亜自動車の工場で組み立てられる見込みである」と具体的にレポートしたことで話題が一気に沸騰した。

(参考)「Apple and Hyundai-Kia pushing toward deal on Apple Car」(CNBC)

 しかし1カ月後の2月8日、現代自動車と起亜自動車がアップルとの協議を正式に否定すると、韓国株式市場では失望売りが殺到し、現代自動車株は前週末終値に比べて約8%、起亜自動車株も約15%下落した。

 相前後して2月初旬になると、今度はアップルカーの生産を日本のメーカーが受けるのではないかという憶測が広がり、提携先の候補として最有力視されたマツダの株価は2月6日にストップ高(966円と222円もアップ)を記録、同じく候補として名前が上がった日産やその傘下の三菱自動車の株価も急騰した。非対称な契約を強要するアップルからの委託生産では高い利益率は到底期待できないものの、工場稼働率を上げることで業績不振の自動車メーカーはバランスシートを改善できるはずと投資家が踏んだのだ。

 事実、日産は2021年夏にSUVタイプのEV「アリア」(TVCMでキムタクがアピールしていることですでに広く知られている)を投入する予定がありながら、2月9日の決算会見の場において内田誠社長兼CEOがアップルカーの委託生産について肯定的なコメントを発信、協業について含みを持たせることで投資家の関心を惹きつけることに成功した。

すべてはメディアによる勝手な憶測

 ただ注意しなくてはならないのは、いつもながら秘密主義を貫くアップルからは、アップルカーについてはいかなる情報発信もなされておらず、すべてはメディアによる勝手な憶測で少なからず混乱が起きていることだ。