コロナ禍で苦境を強いられる百貨店業界。グループ傘下のカード会社も同じ環境に立つ。しかし、手をこまぬいているわけではない。状況改善を狙い、グループ間の連携を強化するとともに、デジタルテクノロジーを活用した新たな施策も積極的に打ち出している。J.フロント リテイリング(JFR)グループのJFRカードもそうした1社である。2018年3月に外部から招聘されて社長に就任、同社の改革をリードする二之部守氏に、グループ内での役割と、決済・金融事業の将来ビジョンについて聞いた。
百貨店という業態がサステナブルではなくなった
JFRカードは、大丸松坂屋百貨店、パルコを展開するJ.フロント リテイリング(JFR)グループでクレジット金融事業を手掛ける。その役割は、「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する。」というグループビジョンの下、決済サービスや金融サービスを提供することで、小売業の枠を超えた“マルチサービスリテイラー”としてのグループ発展を支え、グループの中核となる事業を創出していくことだ。
「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する。というグループビジョンは2017年、当時の山本良一社長(現取締役 取締役会議長)がグループ内で議論を重ねて、この言葉をつくりました。この背景には、百貨店という業態がもはやサステナブルではなくなったことがあります。かつてのようにモノを並べて売って、お客さまに喜んでもらい、収益を上げていくというモデルが過渡期を迎えています」。こう話すのは、JFRカード代表取締役社長の二之部守氏だ。
百貨店というと、これまで海外の特選ブランドを紹介したり、質の高い食品や商品を提供することで、消費者の新しい生活の形をつくってきた。そのビジネスモデル自体がターニングポイントを迎えているのだ。
「そうした中で、JFRグループが、これまでも、これからも変わらず目指していくものは何かと考えたときに、やはりそれは、お客さまの日々の暮らしの中で新しい価値や幸せを提供していくことであり、それらを今までと違った形で提供するという意味で『発明』という言葉を使っています」と二之部氏は説明する。