事業承継の検討において羅針盤となる「事業計画」は必須

――事業承継を検討する際、どのような課題に直面しやすいのでしょうか。

鈴木氏 事業承継の検討にあたって、これだけは準備しておいて欲しいというものが事業計画です。

 事業承継には、M&Aをはじめ多くの選択肢があります。後継者の有無、後継者がいる場合にはいつやるのか、親族なのか親族外なのか、タイミングはいつなのか、など悩むことばかりです。後継者がおらず、外部に頼るとなると、M&Aを検討します。オーナーによっては、IPOを目指すのか、第三者に売却するのか、といった選択肢で悩む方もいます。両方を並行して検討し、最終的に好条件の方を選択するといったこともあります。いずれにせよ、自社の価値評価をするには事業計画が必要です。

 印刷業界に関しても、他業界と同じようにデューデリジェンス(資産調査活動)が必要です。財務諸表や顧客基盤、製造設備の老朽化状況などを全て洗い出した上で、何が強みなのか、再点検して数値化します。オーナーにはビジョンが必ずあるはずで、それに向かって会社を進めるための羅針盤となるのが事業計画です。

 ところが実際は、かなりの割合で事業計画がないケースがあります。そして「ない」ことの裏には、やはり理由があります。つまり、羅針盤があるようでない=向かうべき場所が見えていないということです。

 印刷業界では既に淘汰が始まって長い時間が経過していますが、ここにきてデジタルトランスフォーメーションも加速し、さらにこの流れは強まるかもしれません。混沌とした中で市場がどこに向かっているのか、その行き先によって会社の売上がどうなるのかが見えていれば正しく舵を切ることができます。事業計画は、そのためにも欠かせないものなのです。