日本企業、とりわけ中小企業に訪れる事業承継問題。時代に淘汰される前に次の一歩を踏み出すべく、今、経営者はどのような対策を講じるべきなのだろうか。そこには、自力での突破口が残されているのか。あるいは、譲渡や売却の検討を進めるべきなのか。
中小企業経営陣が常に頭を抱える「事業承継問題」の解決策について、事業承継案件に特化した独立系M&Aファーム GCAサクセション 常務執行役員の鈴木道夫氏に話を聞いた。
事業承継の実現で重要となるのは「決断力」
――いま、日本の中小企業経営者にとって事業承継が深刻な課題となっています。印刷業界も例外ではありませんが、事業承継を実現する上で最も重要なポイントは何でしょうか。
鈴木氏 やはり、変化に対応する決断力が大切だとつくづく感じます。ただし、言うのは簡単ですが、実際にやるとなると大変です。どうしても変わることのマイナス面を考えてしまい、怖くなる。ワクチンの効果を理解していても、それ以上に副作用を気にしてしまうようなものです。それでも、変化を恐れずに決断する力が必要とされているのが今の時代です。
新型コロナウイルス感染症によって、私たちの生活様式は大きく変わりました。そんな状況で、今までと同じことをやっていてはまずいということは、経営に携わる人であれば皆わかっています。それでは何をどう決断すべきか。まずは「良質な情報」が必要です。理想は社内に経営企画部や社長室といった部署を設けて情報収集を進めることですが、それが難しい場合は社外にアドバイザーを持っておくことをおすすめします。かかりつけ医のような、いつでも相談できる存在ですね。
変化に先んじて動ける企業は一握りで、大半は遅れがちです。しかし、事業承継において遅れを取ることはリスクでしかありません。そして、その遅れる幅が大きくなればなるほど取り返しがつかなくなるのが現実です。